恋愛関係に終止符を打った恋人たちの心境を彼氏目線で描いた“運命”と彼女目線で描いた“幻”の2曲を、互いが対等の関係で扱われる「両A面シングル」という形態でリリースしたMy Hair is Bad。人間の一番柔らかくて弱くて情けない部分が露わになる恋愛関係の中で繰り返される感情の機微や情景の移り変わりを、本当に丁寧に掬い上げるバンドだなとつくづく思う。
≪床を拭く君の手に目を疑ってた/どうして指輪、外してなかったの?≫(“運命”)
≪指輪に気付いてくれなかったね/そして目を瞑るだけ≫(“幻”)
その答え合わせすら叶わない「最後」を迎えたふたりの話に聴く方はもどかしい気持ちにもなるが、この世にあふれる恋の終わりにはきっとそんな報われない「もしも」がつきものなのだろう。そして「こんな終わりを迎える恋ならしたくない」ではなく「こんな終わりでもいいから誰かを想ってみたい」と思わせてくれるのは、彼らの音楽から、相手と自分に対して正直でいたいという思いが強く感じられるからだ。
時間にすればひと時でも記憶には一生残る、そんな光景を10分弱の恋愛ドラマに仕立てあげてしまえるMy Hair is Badになら、安心して自分の想い出も委ねられる――そう思わずにはいられない、聴き終えた後の余韻までじっくりと堪能できる二部構成の恋の話。(峯岸利恵)