今週の一枚 ゴールデンボンバー『キラーチューンしかねえよ』(+「初聴き先行披露ライブ」レポ)

今週の一枚 ゴールデンボンバー『キラーチューンしかねえよ』(+「初聴き先行披露ライブ」レポ) - 『キラーチューンしかねえよ』『キラーチューンしかねえよ』


オリジナルアルバムとしては『ノーミュージック・ノーウエポン』以来2年7ヶ月ぶりとなる新作。自信満々のタイトルからも窺えるようにたっぷり笑えるし盛り上がるのだが、それだけではなくて「いい曲だなあ」と思わず浸ってしまう瞬間が何度も訪れる。鬼龍院 翔(Vo-karu)が執念で掴んだグッドメロディの数々と、エアバンドであることを逆手に取った自由度高く豊穣なアレンジに酔いしれる、素晴らしいアルバムだ。

なおリリースに先がけて1月29日には、東京・豊洲PITで「ゴールデンボンバー ニューアルバム『キラーチューンしかねえよ』 鬼龍院以外のメンバーも初聴き先行披露ライブ」を開催。LINE LIVEでの生配信も行われたので、ご覧になった方は多いだろう。キリショー以外のメンバーはいつも完成した音源を送っても聴かないので、ぶっつけ本番の新作ライブ(収録曲順に披露)で当て振りをさせ、また慌てふためく姿をお客さんに楽しんでもらおうという企画だ。以下、その模様を絡めてレビューを進めます。こちらも新作を聴かずに参加しました。それが礼儀というか作法だと思ったので。

まず、1トラック目の“口上”は、読んで字の如し『キラーチューンしかねえよ』導入部の口上。「初聴き先行披露ライブ」では、キリショーが3輪車を漕ぎながら「豊洲PITにお越しの皆さま〜」と登場するバージョンになっていて、喜矢武 豊(Gita-)、歌広場 淳(Be-su)、樽美酒 研二(Doramu)の3人が呆気に取られたまま本編がスタートである。情熱的なラテンムード歌謡の“燃やして!マイゴッド”では、さっそく喜矢武がギターパートの少なさに動揺を見せたものの、咄嗟にコーラスで対応したのは見事だった。曰く「鬼龍院の音楽、10年ぐらい聴いてるからな。クセが分かる」とのこと。一方の樽美酒は「3人でアイコンタクトしよう!」と呼びかけるが、いずれにしてもエアーバンドにあるまじき発言である。


COUNTDOWN JAPAN 17/18でも披露されたメンタルズタボロのビートポップ“やさしくしてね”、シングルでは47都道府県のバージョンがそれぞれリリースされたレイヴチューン“やんややんやNight〜踊ろよ日本〜”、リアリティに踏み込む切実なラブソングの“水商売をやめてくれないか”、そしてアルバムリリースのタイミングに再び真価を発揮する灼熱のメタル“#CDが売れないこんな世の中じゃ”という一連の既発曲は、キリショー以外の3人もすでに楽曲を知っているわけで、ダンスを交えながら伸び伸びとプレイ。「ライブはこうでなくっちゃ!」と満足げだ。ハードなドライブ感の中で誠実さが憎悪に反転する“お前を-KOROSU-”では、「ヘドバンするときは言えよ!」、「こういう自分勝手な奴が嫌われるんだよ!」と逆にキリショーが怒られてしまっていた。

歌広場に「この曲好き! ドラゴンボールのED曲みたい」と好評だった“スイートマイルーム”は別れの余韻を噛み締める美曲で、歌広場サイドのフロアではハンドウェーブ、喜矢武サイドのフロアではテツandトモのテツ風ダンスが繰り広げられるという自由な解釈のカオス状態に。また、無数の感情を塗り重ねて生きるロマンチックな“うれしいかなしい”はストリングス入りの壮麗なアレンジだったが、喜矢武がアコギをバイオリンやチェロに見立てて当て振りし、手持ち無沙汰な歌広場と樽美酒はステージに座り込んで乾杯&歓談としゃれこんでいる。

陰キャのサマーパーティーチューンとなった“海山川川”は、喜矢武がタイトルから曲調を予想して見事正解。ところが、マキシマム ザ ホルモン風のラウドナンバーだと予想した樽美酒が、キリショーの爽やかな歌い出しにデスボイスを被せるパワープレイを敢行。これがお客さんにウケてしまった。また、“誕生日でも結婚式でも使える歌”は、《Happy Happy ふんふんふふん…》という曖昧なエンディングコーラスで大笑いしたが、この曲だけは金爆が自社で著作権管理しており、事実上の著作権フリー。ユーザーが自由に使っていいとのこと。途中にいきなり重いベースのラップパートが挿入されているのが難だが、とても面白い試みだ。


“あの日君を傷つけたのは”はしっとりとした優しい曲調。ライブでは、メンバー4人が横並びで腰掛けて肩を揺らしながら披露するという阿吽の呼吸を見せる(樽美酒もドラムを放棄してギターを携えていた)。キリショーは「なんか……ちょっといいグループだと思っちゃった(笑)」と感慨深そうだ。そして、アルバムの最終トラック“ドンマイ”は、実はMVを収録済みで3人も知っている曲であった。キリショーの口笛パートが心許ないものの、最後にはお客さんもコーラスを覚えて合唱である。

粒ぞろいの『キラーチューンしかねえよ』は、キリショーが“#CDが売れないこんな世の中じゃ”の反骨精神に裏付けられた創作クオリティを見せつける作品だ。そして「初聴き先行披露ライブ」は、金爆ライブのキモであるネタの仕込みがまったく使えないからこそ、メンバーの丸裸の実力で笑いを掴む企画であった。アンコールでは、すっかり「デスボの曲」として認知されてしまった(音源は違うけど)“海山川川”を再び披露。イベントの趣旨からして過去の曲をやるのは何か違う、と語るキリショーは「新しいアルバムを愛してくれ!!」と叫んでいた。全ミュージシャンの偽らざる本音だろう。『キラーチューンしかねえよ』は、まさに愛されるべきアルバムである。(小池宏和)

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