今週の一枚 MONOEYES 『Cold Reaction Tour 2015 at Studio Coast』

今週の一枚 MONOEYES 『Cold Reaction Tour 2015 at Studio Coast』

MONOEYES
『Cold Reaction Tour 2015 at Studio Coast』
2016年3月9日(水)発売



「みんなはあのドアを出て、また明日から日常生活に戻る。で、なんか見落とすかもしんねえじゃん。あれ、俺が大事にしたかったものってこっちだったっけ、こっちだったっけ。ガキの頃には迷わなかったのに。こっちのほうがみんなには大事そうなんだけど、俺にはこっちが大事に見えんだけど。俺が間違ってんのかな、とか迷ったら、いつでもライヴハウスに帰っておいで」。ライヴ映像の終盤、細美武士がそう告げ、MONOEYESは“Run Run”の雷鳴のようなイントロを轟かせる。

『Cold Reaction Tour 2015 at Studio Coast』は、ロックの熱量と美しさ、そしてバンドの物語性までを明瞭に伝える、最高レベルの映像作品だ。同タイトルのツアー終盤、新木場スタジオコースト2デイズの2日目の模様を収録している。僕は初日のライヴを実際に観たのだが、細美はその日のステージでも前述のMCと同じことを言っていて、MONOEYESの始動と疾走、その第1章と呼ぶべき物語が、完璧に締め括られたと感じた。

メロディアスなベースラインを奏でながら、スコット&リバースやアリスター名義のレパートリーも名演に仕立て上げるスコット。酒の失敗談で笑わせつつ、汗の飛沫を撒き散らして前線の3人を突き飛ばすようにビートを繰り出す一瀬。満面の笑顔で飛び跳ね、オーディエンスに向けしきりに視線やハンドサインを投げかけるトディ。それぞれにロックシーンの最前線でリードしてきた4人は、なぜMONOEYESの名のもとに結集し、痛快極まりない爆音とグッドメロディを放ったのか。その理由が、先の細美のMCに集約されている。率直極まりないロックを奏でなければならない根拠を、あの4人は発見したのである。

思いきり弾けたライヴに思えたが、とりわけ“Get Me Down”や“Wish It Was Snowing Out"あたりでは、楽曲の繊細な美しさがしっかりと収められている点も素晴らしい。ダブルアンコールの“When I Was A King”で目の当たりにする揉みくちゃの歓喜には、我々がライヴ会場に集まり来る理由が詰め込まれているので、見逃さないようにしてほしい。すべての人にとっての正義ではないかもしれないけれど、偏った正義に追い詰められ苦しんでいる人を解放するものが、ここにはある。

そして、ボーナス映像のドキュメンタリー「The First Year Of MONOEYES」である。2015年2月のプリプロからレコーディング風景、7月東北のプレツアー、9月「Far East Union Vol.1」の韓国や台湾での楽しげな舞台裏と、MONOEYESが駆け抜けてきた濃い1年がさらにギュッと凝縮されている。(小池宏和)
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