今週の一枚 SEKAI NO OWARI『SOS / プレゼント』

今週の一枚 SEKAI NO OWARI『SOS / プレゼント』 - 『SOS / プレゼント』初回限定盤A『SOS / プレゼント』初回限定盤A

SEKAI NO OWARI
『SOS / プレゼント』
2015年9月25日



“SOS”ミュージックビデオ

“ANTI-HERO”をトライアルというなら、“SOS”は超トライアル、“ANTI-HERO”をセカオワらしい曲というなら、“SOS”は超セカオワらしい曲だ。ここで彼らがやろうとしていること、それは、ポップソングの素晴らしさを伝えるという大命題——を超えた普遍の作業、言うなれば「教育」に近い、なんてことを思う。その意味に言うと、この曲は間違いなくセカオワにしか作れなかった曲だが、この曲のあり方を発想すること自体セカオワにしかできない。本当にすごい曲だ。

全編ファルセット。全編英語詞。ピアノとギターによるエチュードのような、静かで、しかし技巧的なアレンジ。

こういった要素が話題になっている。そりゃ話題になるだろう。このどれもが日本のポップミュージックシーンにはほとんど存在していないものだからだ。さっきの話でいうなら、こういった要素による曲をリリースすること自体、そもそもセカオワしか想像すらしないだろう。
 
まず、そのすべてが美しいということ、そして誰しもがこの曲が何より美しくだから素晴らしいことを一発でわかる、つまり「ポップ」なものとして存在している、ということがこの曲のまず最初のすごさだ。要素のトライアル性を考えるともはや奇跡的ですらある。だが、この曲の本当の素晴らしさは、「何を伝えようとしているのか」という点、つまりメッセージにある。その要素をひとつだけ抜き出すとしたら、その役割の多くは歌詞が担っている。
 
この曲は《君にこの歌を歌うよ》(さっきも書きましたが、歌詞自体はすべて英語です)という呼びかけから始まる。Fukaseの声の優しい温度、そしてのちに出てくる「子供たち」という言葉からしても、まさに幼い子供たちに届けられることを目的とした曲だと思う。

ではセカオワは子供たちに何を伝えようとしているのか。
ひと言でいうなら、それは「自分自身を大切にするためにはどうしたらいいのか」ということだ。そしてさらにセカオワはこの曲の中で、そのための方法を明確に提示している。
それは——「誰かのSOSに答えること」。つまり「誰かを救うことは自分を救うことと同じ」なんだということを歌っているのだ。さらに感動的なのは、その「方法」をこの歌を聞いている子供たちはもうすでに「知っているはずだよね?」と信じ、そう優しく呼びかけているということだ。

「相手の中にすでに正解があること」を信じ、その本当の解は君の中にあるんだよと呼びかけること。正解を教えるのではなく、あくまでも子供たちの中から引き出して見せること。この曲でセカオワがやっているのはそういうことだ。
ものすごくつまらない言い方を許してもらえるならば、僕はこの方法を指す近い概念として、「コーチング」という言葉を思い浮かべる。と言いつつ、それはちょっとつまらなすぎるかなとも思うので、少し文学的に言い換えさせてもらうならば、この歌は、人類の「道徳的進化」について歌った曲なのである。
正直にいうが、このテーマに踏み込んだ表現物として、僕は「ポップミュージック」というかたちで出会ったことはないんじゃないかと思う。僕が知る限り、この概念は絵本や小説や映画の中にしかなかったものだと感じる。
 
セカオワはこれまで、子供から大人、おじいちゃんやおばあちゃんまでまさに老若男女に届くものを「ポップ」であるとし、それこそが「エンターテインメント」であると信じてきたバンドだ。そして、事実そういう曲を作り、そういうライヴを作り続けてきた。
Fukaseは『JAPAN』11月号(9月30日発売)のインタヴューで、「この曲のアイディア自体はもとからあって、それを今出した、というだけの話」と話してくれたが(そして、それはそれで驚くほどに感動的な話なのだが)、やはりこの曲のメッセージの「精度」は、ポップとエンタメに賭けてきたセカオワのこれまでの活動が生んだ、凄まじい「普遍化」の結晶であると思う。
このあまりに素晴らしい歌詞を、Fukaseの「白い歌詞を書いてほしい」というリクエストに応えて書き上げたのはSaoriであり、Fukaseの考え方とメロディ、Saoriの歌詞にぴったりと寄り添うアレンジを組み上げたのはNakajinである。この話の心は、ソングライター3人それぞれの「白い歌」というテーマが折り重なり、3つの感性の真部分集合を貫かれているからこそ、まさに老若男女に届けられるこの普遍のポップソングが生まれたということだ。

常に世界の本質を感じ取り音と言葉にすることができる個人の集まりとしてのセカオワ。そんな彼らの今の実感が詰まったポッソングがこの“SOS”なのだと思う。
(長くなってしまったので両A面のもう1曲“プレゼント”についてはまた書きます)(小栁大輔)
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