今週の一枚 BABYMETAL 『METAL RESISTANCE』

今週の一枚 BABYMETAL 『METAL RESISTANCE』 - 『METAL RESISTANCE』通常盤『METAL RESISTANCE』通常盤

BABYMETAL
『METAL RESISTANCE』
2016年4月1日(金)発売



今にして思えば、“Road of Resistance”“KARATE”“あわだまフィーバー”“ヤバッ!”“THE ONE”といった「1stアルバム『BABYMETAL』以降」の楽曲が出揃った昨年末の横浜アリーナ公演は、「メタルレジスタンス エピソードIII:TRILOGY」のフィナーレであると同時に、当初の「メタルダンスユニット」という枠組みを遥かに超越した今作への道を指し示す、破格のスケールの黙示録でもあった。そして、その横アリ公演2日目の最後、“THE ONE”で3人がゴンドラごと天空を舞った後に、ワールドツアー&東京ドーム公演開催とともに告げられたのが、FOX DAY=4月1日、「新たな教典」こと2ndアルバムの全世界同時発売だった。

2014年武道館公演で演奏されたSU-METALソロ曲“NO RAIN, NO RAINBOW”も含め、アルバムリリース前の時点で披露された6曲については、以前ここRO69のコラム(http://ro69.jp/news/detail/140214)でも触れたが、約2年ぶりとなる今作『METAL RESISTANCE』の最大の特徴はやはり、広大な世界のメタルシーン=「メタル戦国時代」と真っ向勝負で対峙するかのように、というかメタルシーン丸ごと全12曲のアルバムに呑み込むかのように、その音楽世界を大きく、幅広く進化させていることだ。

メロディックスピードメタルの粋を集めた“Road of Resistance”。ドゥームメタルの重量感&《セイヤ ソイヤ 戦うんだ》という凛とした熱唱&空手アクションが渾然一体となって渦巻く“KARATE”。ヘヴィメタルに哀愁と妖艶さを重ねたジャパニーズメタルの美学がこの上なく目映く炸裂する、SU-METALソロ曲“Amore -蒼星-”。冒頭からブラストビート弾けるメロディックデスメタルの熾烈なサウンドを、YUIMETAL&MOAMETALの歌声が軽やかに乗りこなす“Sis. Anger”(タイトルはメタリカ“St. Anger”へのオマージュか)。変拍子入り乱れるドリーム・シアター的な極彩色の音像が、終幕へ向けて組曲の如きプログレメタル絵巻を繰り広げていく“Tales of The Destinies”&“THE ONE”……。重轟音デジタルハードコア×ポップ(“あわだまフィーバー”)、スカパンク×メタルコア(“ヤバッ!”)、超硬質ポップミクスチャー(“GJ!”)など「ポップの躍動感でメタルを拡大解釈する」ような楽曲も、この『METAL RESISTANCE』の大きな魅力ではあるが、多彩なメタルのテクスチャー越しに世界のメタルシーンと向き合ったような前述の楽曲群からは、「世界をメタルでひとつにする」=「メタルレジスタンス」というコンセプトが、というか夢が、よりくっきりと伝わってくる。

その「夢」はもちろん、SU-METAL/YUIMETAL/MOAMETALのメンバー3人だけの夢ではない。バックを固める超絶テクの持ち主「神バンド」や制作陣まで含めた「BABYMETAL軍団」はもちろんのこと、海外進出という途方もない挑戦に打って出た彼女たちが活躍する姿に魂を鼓舞された、世界中のリスナー/オーディエンスの夢でもある。そして、「メタルレジスタンス」という2010年代の叙事詩や《僕らの声/僕らの夢/僕らのあの場所へ/We are THE ONE/Together/We are the only one》(“THE ONE”)という壮大なイメージに強烈な誘引力を与えているのは他でもない、BABYMETALの3人が放つヴァイタリティそのものだ。広大な荒海に立ち向かった彼女たちの決意が、さらに研ぎ澄まされたハイエナジーな楽曲と演奏を呼び起こし、BABYMETALの3人の表現をより激しく鮮やかな次元へと導く――そんな無限の情熱の輪廻が、世界が待ち焦がれた今作には確かに結晶している。(高橋智樹)
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