今週の一枚 MAN WITH A MISSION『Chasing the Horizon』

今週の一枚 MAN WITH A MISSION『Chasing the Horizon』 - 『Chasing the Horizon』通常盤『Chasing the Horizon』通常盤
まずはこの2018年に、これほど威風堂々と王道をゆくロックアルバムが生み出されてしまったこと自体、驚きを禁じえない。しかしそれは、我々がMAN WITH A MISSIONというバンドに期待していたことでもある。現在発売中の『ROCKIN’ON JAPAN』2018年7月号表紙巻頭インタビューで、ジャン・ケン・ジョニー(G・Vo・Raps)は「現代の世界のロックは文化的な影響力を失っている」という意味の発言をしているが、新作『Chasing the Horizon』はその事実を立脚点に、MWAMの総合的なサウンドとメッセージでロックの反骨精神を迸らせる傑作である。

もはや、MWAMがオオカミの顔をした楽しいだけの色物バンドだと思っている人は一人もいないだろう。彼らは数々のタイアップ曲でお茶の間を賑わせる一方、世界のロックサバイバーたちと共演しタフなロード生活に挑み続ける屈強なライブバンドでもある。一昔前の日本のバンドマンが夢見ていたことを、すべて体現していると言ってもいい。前作『The World’s On Fire』は、世界中のライブハウスに染み付いたロックのスピリットを纏めて解き放つ作風になっていたが、新作では新たなサウンドの冒険に赴きながら「今のMWAMは何をやってもロックになる」という境地に達している。

例えば、BOOM BOOM SATELLITES・中野雅之とのタッグでエレクトロニックな推進力を持ち込んだ“Hey Now”、クラシカルな大所帯ストリングスのアレンジで物語性を増幅させた“My Hero”、世界を股にかけ活躍するバンド同士のコラボだからこそ思い切り大和魂を燃え上がらせることができた“Freak It! feat.東京スカパラダイスオーケストラ”といった一連の既発曲は、大胆なアレンジを施しても揺らぐことのない、MWAMがツアーを通して鍛え上げたロックアンサンブルを証明していた。

新作の冒頭を飾るのは、カミカゼ・ボーイ(B・Cho)作曲による“2045”だ。2045年に人工知能が人類の知能を超えるという仮説=シンギュラリティ問題を引き合いに、SF的な視点で警鐘を鳴らしている。ロックバンドの生のダイナミズムが、これほどサマになるテーマもない。続く“Broken People”はジャン・ケンが手がけたナンバーで、のたうつデジタルハードコアと共に壊れた社会と権力を詩的に射抜く。のっけから現代生活のシリアスな一面を抉る新曲が2曲続いた後、トーキョー・タナカ(Vo)の雄々しくロマンチックな歌メロが溢れ出す“Winding Road”が配置されるあたりも心憎い。

繊細な詩情が壮大なサウンドに乗って展開する“Please Forgive Me”は、“Find You”と比肩するレベルで今のMWAMの高度な構築力を示した名曲だろう。また、スティールパン風のキーボードでユニークに切り出されるタイトル曲“Chasing the Horizon”は、ベッドで子供にお伽話を語り聞かせるような歌詞も秀逸。この曲は前作の幾つかの収録曲と同じく、米国のプロデューサーであるショーン・ロペス(デフトーンズ関連作などを手がけている)との共作だ。多種多様なエレメントを飲み込んで成長するMWAMのサウンドを、全編に渡って青臭いまでのロマンチシズムが貫き、血の通った感情表現へと昇華させている。

つまり、経験や技術や人脈といった大人びたオオカミの一面をふんだんに注ぎ込む一方、若く青いロッカーとしての精神性を守り抜きそこにフォーカスすることで、MWAMは現代の王道ロックアルバムを完成させたのである。その点が最も素晴らしい。この作品は、生活の中で半端に小狡い生き方を学んでゆく我々の魂に強く問いかけてくる。「あなたは、今いる場所に本当に満足しているのか?」と。もちろん、我々の求めるロックとは、そんな生きにくさと紙一重の問いかけの中にこそあるのだ。(小池宏和)
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