【今週の一枚】まふまふのアルバム『神楽色アーティファクト』が生んだ全く新しい世界とボクのコミュニケーション

【今週の一枚】まふまふのアルバム『神楽色アーティファクト』が生んだ全く新しい世界とボクのコミュニケーション - 『神楽色アーティファクト』『神楽色アーティファクト』
ネットシーンが生んだ稀代のマルチクリエイター・まふまふ。若年層を中心に絶大な支持を受ける彼の前作『明日色ワールドエンド』以来2年ぶりとなるアルバム『神楽色アーティファクト』がついに発売となる。

まず特筆すべきなのは、全20曲という圧倒的な曲数の多さだ。CDに収録できるギリギリの分数まで詰め込まれた20曲を通して聴いてみれば、今度はその音楽性の幅広さに驚かされることになるだろう。“サクリファイス”や“廃墟の国のアリス”のような絶望と慟哭が詰まったアップテンポの曲や、「ぬこシリーズ」の最新曲である“すーぱーぬこになれんかった”など、いわゆる「まふまふらしい」ナンバーが土台を固めつつも、今作ではより実験的なサウンドが耳に留まる。
例えば“動かざること山の如し”は軽快なチップチューン。“アートを科学する”はギターを排し、ピアノサウンドがメインとなる透明感のあるメロディ。どちらも茶目っ気とともに、新しい音楽への挑戦が滲んでいる。そして、“君のくれたアステリズム”ではライブに来てくれた観客への純粋な感謝が綴られている。こんなにもわかりやすく前を向いた楽曲は今まででは考えられなかった。どの曲も、ひとたび流れ出せば「今までにないまふまふ」を直感させるはずだ。

前作『明日色ワールドエンド』は、まふまふという存在のイメージを厳密に作り上げ、それをパッケージングした作品という印象だった。それから2年。単独、ユニット、合同イベントなど多くのライブを経験し、タイアップではいくつものアニメやドラマなどの作品の名を背負ってきた。まふまふが表紙を飾った『CUT』2019年10月号のインタビューでは「音源で完成していると思っていた自分の音楽が、ライブで鳴らされた瞬間、目の前の観客の数だけ形を変えることを知った」と語る。ただ音楽を外に向けて放つだけではなく、その先で起こる化学反応を目の当たりにしたこと。それを自分の中に取り入れ、音楽に落とし込んでいったこと。そんな世界とのコミュニケーションがあって、『神楽色アーティファクト』では「らしさ」に囚われ過ぎず、音楽的に開けていったように感じる。

タイトルには、前作の「明日色」に続き、「神楽色」という架空の色名が冠されている。それがどんな色であるかは、「聞き手それぞれの想像でいいと思っている」と、同じくインタビューでは語っている。一曲一曲が万華鏡のように表情を変えるこのアルバムが、受け取った人の手元でどんな色を見せるのか。その多彩な反響は、まふまふのこれからの音楽にさらに取り入れられていくのだろう。そんな「この先」を強く感じさせる一枚だ。(満島エリオ)

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