奇跡の再集結から3年。そして、解散前のラストアルバム『8』からは19年。ついに届いたTHE YELLOW MONKEYの9thアルバム『9999』は、この日を待ち侘びたリスナーの想いも、自分たちの歴史と可能性も、すべて真っ向から抱き止めて「その先」へと撃ち放つダイナミズムと妖気と、そして全身全霊傾けて「今」を謳歌するユーモアと開放感に満ちている。最高の「新章」だ。
復活第一弾ナンバー“ALRIGHT”以降、“ロザーナ”、“砂の塔”、“Stars”、“Horizon”、“天道虫”、“I don’t know”……と、2016年の復活以降すでに7曲のカードが我々に明かされてはいた。
しかし――『8』の最終曲“峠”で途絶えたアルバムのディスコグラフィを新たに描き始めるように、《錆びついたエンドロールが流れていく/またひとつ僕たちの映画が終わる》と自らの「これまで」を俯瞰するような冒頭の“この恋のかけら”が《さぁ ダメ元で やってみよう/泣いても 笑っても 残された/時間は 長くはないぜ》のフレーズを響かせた瞬間、自分の中の何かが壮絶な勢いで抑え難く動き始めたのを感じた。
T.REXがシャッフルビートで踊り出したような“Love Homme”。吸血鬼の渇きと煩悶に「正解なきロックの生き様」を託した“Breaking The Hide”。透徹した3拍子のピアノバラードに乗せて《愛だけを支えにして/ここまでなんとか歩いてきたんだ》と歌い上げる“Changes Far Away”。“サイキックNo.9”がミステリアスな異次元進化を遂げたかの如き“Balloon Balloon”のサイケデリックな疾走感――。
13曲中6曲がTHE YELLOW MONKEY初のLAレコーディングで制作されたという今作のドライでタフな音像は、吉井和哉(LOVIN/Vo・G)/菊地英昭(EMMA/G)/廣瀬洋一(HEESEY/B)/菊地英二(ANNIE/Dr)の4人が鳴らすロックの剥き身の逞しさと、自らの奥底からなおも新たな可能性を引きずり出して時代に提示しようとする不屈のバイタリティを明快に浮かび上がらせてくる。
3月28日に日本武道館で行われた「『9999』世界最速先行試聴会」(実はメンバー全員登場による「世界最速先行『生演奏』試聴会」だった)の舞台で、「9が4つ並んでいて――ひとりひとりの苦労が集まった、そしてその苦労を4つ並べて、みんなで乗り越えようと、そういうふうにタイトルをつけました」とアルバムタイトルの由来を告げていた吉井。
「これからもミュージシャンとして、人として、まだまだ乗り越えなきゃいけないことがたくさんあります」――さらなるバンドの未来への想いを、吉井がそんなまっすぐな言葉で語っていたのが印象的だった。
THE YELLOW MONKEYが「ロックの伝説」ではなく、紛れもなく「今、ここ」で闘うロックバンドとして2019年のシーンに存在している――。その事実を『9999』は改めてリアルに感じさせてくれる。
なお、『9999』ダウンロード版にはアルバム全13曲に加え、インディーズ時代からの未レコーディング曲“毛皮のコートのブルース”がパッケージされている。
メンバー自身も「二度目のファーストアルバム」と呼ぶ今作は、どこまでも強靭にしてフレッシュな躍動感に満ちている。(高橋智樹)