今週の一枚 ストレイテナー 『NO ~命の跡に咲いた花~』

今週の一枚 ストレイテナー 『NO ~命の跡に咲いた花~』

ストレイテナー
『NO ~命の跡に咲いた花~』
2015年7月15日発売



響く。そして震える。ストレイテナーの新曲“NO ~命の跡に咲いた花~”は、2015年の夏に届けられなければならないロックソングだ。危機意識が強い表現衝動と化し、率直なメッセージを伝えるためにこの1曲が編まれている。

《八月》という季節について、あなたは何を思い浮かべるだろうか。若い人なら夏休みだろうし、ロックフェスかも知れないし、甲子園かも知れないし、夏期講習かも知れない。“NO ~命の跡に咲いた花~”は、そんな我々の平和な《八月》の根本を問い直すナンバーである。戦後70年の《八月》に向けて届けられる歌なのだ。静謐に優しく立ち上がる旋律は拭い去ることの出来ない悲しみを宿し、それでもストレイテナーの力強いアンサンブルは、楽曲の最後に放たれる決定的なメッセージを目指して突き進んでゆく。

平和を願い、祈る歌は星の数ほどあるだろう。同じように、誰だって(ではないかも知れないが)漠然と平和を願っているし、祈っているはずだ。“NO ~命の跡に咲いた花~”に宿された特別な力というのは、単純に戦後70年というタイミングに放たれる平和の歌だからではなくて、《I think of tomorrow/I sing for tomorrow/I say no》という強烈な意志の形に結実しているからである。ホリエアツシは、このラストセンテンスに至るまでの歌詞をすべて、繊細な詩情に満ちた日本語で綴っている。

なぜ、繊細で美しい詩情の先に《NO》という意志の形が必要なのか。その理由は、今の日本に暮らしている人の多くが肌で感じていることだろう。「もはや次の戦前だ」なんて声が聴こえてきたりもする時代だ。平和を見失い、平和を履き違えることの危機意識が、“NO ~命の跡に咲いた花~”には渦巻いている、その上でホリエは、ぼんやりとした願いや祈りではなく、《NO》という意志のつぶてを投げ掛けるのである。《YES》よりも遥かに優しく、尊い《NO》があるのだということを“NO ~命の跡に咲いた花~”は教えてくれる。ディスクレヴューとして適切な言葉かどうか分からないが、僕はこの歌を断固支持する。

なお、カップリングの“Curtain Falls”は、人々の間で受け渡され響き合う「歌」の存在感を伝える、これまた美しいロックチューン。歌に運ばれた思いの種が心の土壌に芽吹き、花を咲かせるまでの物語である。“NO ~命の跡に咲いた花~”という意志の歌と、互いを支え合っているように聴こえるナンバーだ。(小池宏和)
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