今週の一枚 赤い公園

今週の一枚 赤い公園

赤い公園
『猛烈リトミック』
9月24日発売



新世代バンドたちの勢いが止まらない。
だが、勢いはともかくとして彼らの音楽的な「成果」は? と考えることも多い今日このごろである。
そんな疑問に100点満点以上の答をくれたのが赤い公園のこのアルバムだ。
「ライブの動員数」や「10代のリスナーからの支持」といった現象面だけではなく、「アルバム作品」として新世代の決定打と言っていい作品がついに生まれた。
平均年齢22歳−−−赤い公園は今の新世代バンドの中でもさらに若手だが、このセカンド・アルバムは傑作だ。
素晴らしい。
 
もともと赤い公園は、各メンバーの高い演奏のポテンシャル、アレンジの独自性、ライブでのアナーキーなパワーなど、非常に偏差値の高いバンドだった。
一方でソングライターの津野は、SMAPらへの楽曲提供という形でその才能を広く認められつつある。
このアルバムはそうした多面的な赤い公園の「力」がトータルに余すところなく発揮された見事な作品だ。
亀田誠治、蔦谷好位置といった外部プロデューサーの起用、KREVAのゲスト参加も含めて、
赤い公園の表現が飛躍的にスケールアップしている。
シングルとしてすでに世に出ている“絶対的な関係”、“風が知ってる”、“ひつじ屋さん”は赤い公園のこれまでの王道スタイルの延長線上だが、
それ以外のアルバム楽曲の多様なスタイル、柔軟性、完成度はちょっと驚くほどだ。
 
 
このアルバムで初めて見えたものがあった。
それは、津野米咲の楽曲と歌詞はポップだということだ。
そんなことはもうとっくにわかっているよ、と言われるかもしれないが、
今、そう思われている以上に、本当にこの時代において「王道」と言えるほどポップだということ。
22歳の津野が今の時代を生きている中で感じる感覚や見えている世界、描きたい感情を、できる限りそのまま正確に表現してきたのが赤い公園の音楽で、
最初はそれが「アンバランス」「歪」「乱脈」という印象で受け取られてきた。
だがもはやこのアルバムにおいては、その感覚こそがみんなが感じているありのままのフィーリングであり、みんなが見ている光景そのものであり、今の時代のあたりまえのポップ感覚であるということが、堂々と表明されている。
相変わらずひねりのある楽曲、複雑なアレンジ、歪な音の使い方など、手法は大きく変わらないにもかかわらず、
それらはすべてもはや時代の共通言語でしょう、あたりまえのポップでしょう、と聴かせてしまう説得力がどの曲にもある。
 
ロック幻想も古くなってしまった。
未来への希望はとっくに無く、絶望すら持たせてもらえない。
つぶやいて癒えるコミュニケーションの効き目の範囲もわかってしまった。
残ったものは自分という病と、音楽−−−−−−。
そこまでわかってしまった世代の、正直な表現。
それが赤い公園だと思う。
そして、それはもはやみんなにとってもあたりまえのリアルな感覚でしょ?とポップに鳴らしたのがこのアルバムだと思う。
売れるための妥協でもサバイバル術でもなく、超攻撃的な本気の逆襲としてのこの「ポップ」なアルバムを強力に支持したい。
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