今週の一枚 tofubeats

今週の一枚 tofubeats

tofubeats
『First Album』
10月2日発売



新井ひとみ(東京女子流)、の子、藤井隆、PES、BONNIE PINK、森高千里などをフィーチャリングした歌もの、tofubeats本人のラップ、そしてインストと、
バリエーション豊かで中身の濃い一枚。
ヒップホップもハウスもパラパラもポップスもすべてダンスミュージックとして相対化されていて、その上にさらに「J-POP」という視点で徹底的に対象化されているのが見事である。
そんな吹っ切れた00年代トラックスの合間から聴こえてくる
「インターネット繋いでバカンス ダンス踊って忘れちゃう ヘッドホンは外せない YOU&I つれないことばっかして食えないし」
といったリリックはめちゃくちゃグッとくるし、
ふとしたシンセのメロやオートチューンでの歌メロは限りなくセンチメンタル。
あらゆるパーティーのいろんな時間帯で、フロアの客をせつなく踊らせることになるだろう。

tofubeatsの、「餅つきで言えばつく方じゃなくてこねる方」みたいなスタンス。
「つく方」に対抗するんじゃなくて、「こね」に徹することで「餅つき」をレベルアップさせるというスタンス。
主役も脇役もなくて、もっと言えばアーティストもリスナーもなくて、
みんなが「音楽」に奉仕してその「音楽」から喜びをもらうんだ、というスタンス。
神戸に住み、子供の頃からインターネットとブックオフがあって、手にした「楽器」はサンプラーで、ロックもヒップホップもポップもすべては「J-POP」で、生きてる時代はパッとしなくて、でも実はやろうと思えばなんでもできて……というスタンス。
そうした「スタンス」そのものが鳴っているのがtofubeatsの音楽だ。
多くのアーティストたちはその「スタンス」を自分の楽曲解釈に取り入れたいと感じて彼にリミックスを依頼し、
多くのリスナーはその「スタンス」になにかピンとくるものを感じて彼のファンになる。
主役でも脇役でもなく、しかも「こねる方」に徹したまま、tofubeatsのスタンスと音楽は今の時代の中で光っている。

豪華ゲスト陣の吹っ切れた歌をエッジーなオケに乗せて時代に放ち、
遊び心満載のトラックでそれらを繋ぎながら、その隙間で胸に秘めた本音をせつなくつぶやく。
相対化されまくったメタJ-POPアルバムでありながら、tofubeatsのソウル・アルバムでもあるというところが見事だ。
山崎洋一郎の「総編集長日記」の最新記事
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする