今週の一枚 宇宙まお『夢みる二人 / おいしいごはん』
2015.05.04 11:20
宇宙まお
『夢みる二人 / おいしいごはん』
2015年5月6日発売
昨年は初のフルアルバム『ロックンロール・ファンタジー』を発表し、ワンマンライヴやフランスでの音楽修業、自主企画イベント、Jリーグ2部のサッカークラブ水戸ホーリーホックの応援ソング『無限の力』のリリースなど、活動のフィールドを広げつつ精力的にアウトプットをしてきたシンガーソングライター宇宙まお。約半年ぶりのリリースとなるシングルは、5月14日から開催される巨大フードフェス「まんパク」のテーマソング“夢みる二人”と、昨年期間限定で無料配信した“おいしいごはん”の両A面シングルだ。
“夢みる二人”も“おいしいごはん”も、人間の生活の真ん中にある「食べること」をモチーフにした曲、という点では共通している。しかし、そこに描かれている風景と歌い込まれている心情は正反対といっていいほどに違う。そしてその違いはそのまま、宇宙まおがこの1年でどんな成長と変化を遂げてきたかを物語っていると思う。
“おいしいごはん”では《どうかずっと どうかずっと/おいしいごはんを 一緒に食べよう》と、私とあなたをつなぎとめるものとして描かれていた「ごはん」が、“夢みる二人”では《おなかいっぱい 食べたら/明日も きっと うまくゆく》というあっけらかんとしたポジティヴィティと共に歌われている。あるいは“おいしいごはん”で《愛は空想 夢は目眩し》と歌われていた「夢」という言葉も、“夢みる二人”では《夢をみよう/どこまでも 君と二人で》という確信に変わっている。「あなた」と繋がりたいという願いが、「あなた」と繋がっている!という実感に取って代わっているのだ。その実感こそ、宇宙まおがついに獲得した、シンガーソングライターとしてのプライドである。
この1年、宇宙まおはいつものライヴハウスやフェスではない、いろいろな場所で歌い、そこでたくさんの出会いを果たしてきた。ゼロからの歌を介したコミュニケーションで目の前のお客さんと関係性を築いていく、そこで得た手応えと自信の表れが、この“夢みる二人”という楽曲だ。
アップテンポに弾むメロディと、何はなくとも《いざ進め!》という度胸。曲全体に充実感が滲み、何かとても大事なものを手に入れて強くなった宇宙まおの姿が浮かび上がってくる。(小川智宏)