今週の一枚 RADWIMPS『RADWIMPSのHESONOO Documentary Film』

今週の一枚 RADWIMPS『RADWIMPSのHESONOO Documentary Film』

2016年3月に全国劇場にて期間限定上映されたRADWIMPSのドキュメンタリー映画『RADWIMPSのHESONOO』、いよいよBlu-ray/DVD化である。

初の海外ツアーとなった「RADWIMPS 2015 Asia-Europe Live Tour」、11組のゲストを迎えた対バンツアー「RADWIMPSの胎盤」、そして10周年イヤーのフィナーレとして2015年12月23日に行われた幕張メッセワンマン「RADWIMPSのはじまりはじまり」へ……といったエポックメイキングなライブ活動が続いたメジャーデビュー10周年アニバーサリーイヤー=2015年を、ドラム・山口智史の無期限休養による活動休止という困難とともに迎えていたRADWIMPS。
そんな中、オーディションの結果選ばれたサポートドラマー:森瑞希、さらに名手:刄田綴色を迎えつつ、苦悩と葛藤を乗り越えてひたむきに前進する野田洋次郎/桑原彰/武田祐介の表情を丹念に追った――というこの作品のディテールに関しては、上映直後にもここRO69でコラム(http://ro69.jp/news/detail/140836)を書かせていただいた通りだ。

しかし、1年弱ぶりに今作の映像を観た印象は、昨年3月時点のものとはまるで異なる。それは当時今作に触れた多くの人にとっても同じだろうと思う。
その理由はまさに、この映画に焼き付けられたバンドのストーリーの後に「1年にアルバム2枚リリース」「そのうち1枚の楽曲群をサウンドトラックとして使用した映画作品が、2016年国内最大のヒット作に」「そのリード曲を携えて、ついには初の『紅白歌合戦』出演を果たす」といった「続章」が、誰の予想も追いつけないほどのペースで次々に展開されていったからに他ならない。

そして――そんな2016年の大躍進が、偶然でも何でもなく、RADWIMPS自身の変化と進化によってもたらされたものであるということも、今さら声高に言う必要もないだろう。
人間と時代の核心を鮮やかに鋭く貫いてみせるRADWIMPSの表現の筆致と、「音楽を体現できる喜び」が強固に結びついたことによって、『君の名は。』という映画の世界と真っ向から響き合った名曲の数々が生まれ、『人間開花』というタイトル通りの才気全方位開放ぶりを凝縮したアルバムが生まれた。すべては必然的なつながりの中にあったのである。

「CDが何枚売れたって言われても、ほんとどうでもよくて。そこに現実感はないから。でも今、僕の目の前にいるあなたは本物で、それだけは圧倒的な事実として突きつけられていて、その事実が僕らを、これからも音楽に駆り立てるし、その視線が僕らを突き動かします。あなたがRADWIMPSに出会ってくれて、本当にありがとうございます」

『RADWIMPSのHESONOO』には収められていないが、幕張メッセワンマンのステージで、野田洋次郎はそんな言葉で3万人の観客に感謝の想いをまっすぐに伝えていた。
2016年の度重なるRADWIMPSの新作リリースはそのまま、今作に刻まれた3ヶ月間の「苦闘の日々」を「栄光への序章」に変える奇跡そのものだった。「バンドの」栄光ではない。このバンドの音楽に夢を見て希望を託した「リスナー/オーディエンスの」栄光だ。
RADWIMPSの音楽を待っている人のために、自分たちが希望になる――バンドの進化を可能にした3人の覚醒と決意の萌芽を、今作の映像からも十分に感じ取ることができるはずだ。

「これからの次の10年、ゼロ歳児が10歳になるだけの大きな変化を、成長を、喜びを味わいたいなって思ってます」……幕張メッセで野田が語っていた言葉通りの物語は、すでに途方もない加速度で走り始めている。そんな2017年の今こそ、この作品に改めて触れるべきタイミングなのかもしれない。(高橋智樹)
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