先週からこのRO69+ブログに掲載されてきた全アルバムレビューをご覧になっていた方はもちろん、今までONE OK ROCKの音楽に触れてきた方であれば誰もが、ONE OK ROCKの楽曲の進化が「今回のアルバムはアレンジ面で新たなテイストを導入して」とか「新たな角度や価値観からロックを研究して」とかではなく、ただひたすらに真っ向勝負でソリッドなロックの「その先」に広がる超スタジアム級の風景を見据えたものだった、ということを改めて認識していることと思う。
それでも彼らは、1作品ごとに確実に自らの音楽の強度と輝度を磨き上げ、ついには『Ambitions』という名盤へと至った。『35xxxv』での海外レコーディングというトライアルをも血肉化し、真摯に、かつ強烈に、ロックの刃を研ぎ澄ませ続けた結果、鋼の刀身がダイアモンドへと昇華された――と思わされるぐらいの驚きと感激を、『Ambitions』のサウンドスケープは確かに与えてくれる。
“Always coming back”“Taking Off”のハイパーな覚醒感は、ロックがロックであるままでどこまでだって新しくなれるという宣誓そのものだったし、“Bombs away”“Bedroom Warfare”などに顕著なUSロック直系のモダンなサウンドプロダクションも、ONE OK ROCKにとっての武装でもギミックでもなく、その表現における必然的なエッセンスとして作品全体と有機的な黄金律を描き出していることが十分に窺える。
そして――アルバム冒頭のインストトラック“Ambitions -Introduction-”を除く今作の13曲の歌詞では、英語メインのリリックの中に必ず数ラインの日本語フレーズが織り込まれている。
足繁く海外ツアーを回り、『35xxxv』以降はUSリリースまで実現しているONE OK ROCKにとっては、全編英語詞のアルバムのほうが作品の仕上がりとして遥かに「美しい」はずなのに、である。
「ONE OK ROCKが好きなファンの中から、僕らを超えるような、とんでもない世界規模のやつが出てくることを、切に願っています」
ONE OK ROCKにとっての最高の晴れ舞台であるはずの昨年9月の渚園ワンマンで、Takaはそんな言葉で自らの理想を語っていたのが、今なお強く印象に残っている。
彼らのロックのロマンが、ただ単に「海外のシーンに打って出る」「世界レベルの成功を収める」だけで満たされるものではなく、日本のロックリスナーひとりひとりの魂とギアを合わせ、日本のロックシーン丸ごと世界標準レベルまでフックアップするような、途方もないスケール感に満ちたものである――ということを、前述の渚園MC同様、今作に綴られた日本語詞からも感じずにはいられない。そういう作品だ。
《幸せの定義は誰にもわからない/決める必要はない/その溢れた感情が/幸せと呼べる日々を作れ》(“Start Again”)
壮大な使命感に満ちたこの進化作を「野望=Ambitions」と呼んだ4人の佇まいには、見果てぬ闘いに向かう戦士のような揺るぎないタフネスが宿っている。なおも前人未到の領域を突き進むONE OK ROCKの「今」を、今作の音は聴く者の頭も心も揺さぶるほどにリアルに伝えてくるのだ。(高橋智樹)