今週の一枚 BUMP OF CHICKEN『BUMP OF CHICKEN「WILLPOLIS 2014」』

今週の一枚 BUMP OF CHICKEN『BUMP OF CHICKEN「WILLPOLIS 2014」』

BUMP OF CHICKEN
『BUMP OF CHICKEN「WILLPOLIS 2014」』
2015年2月4日発売



ライブDVDではなくて、ライブはもちろんインタビューやオフショット、
会場周辺の風景や観客の様子などを含めたツアー・ドキュメンタリーとして作られている。
ライブのクライマックス感をドラマティックに観せる、というのではなくて、
今回の長いツアーの期間中に流れていた時間、もっと言えばファンとバンプの間にずっと流れている時間の意味を確かめるように作られている。
そのせいか、観始めてから観終わるまで、ずーっと感動が持続する。


「いくぜ、お前ら!」
という藤原のMCから東京ドーム公演はスタートする。
そのMCが物語っているように、
バンプはこのツアーで今までにないオープンな姿勢、コミュニケーションを求める大胆な姿勢を見せた。
1曲1曲の深さと繊細さと緻密さはそのままに、
より「届けたい」という気持ちを露わにして、そして「届いている」という喜びをも露わにする、
そういうツアーだった。
“天体観測”で、「オーイエー、アハーン」の観客とのコール・アンド・レスポンスを求める藤原の姿を見た時はほんとに度肝を抜かれた。



このツアー中に、バンプはいろいろな初めての新たな扉を開けた。
初のMステ出演や初音ミクとのコラボ、そして初の東京ドーム公演など、
これまでのバンプからは想像もつかない大胆な試みだった。
それゆえ、ファン以外の人たちにまで大きな話題になった。
そのことに関して、この作品の中で藤原基央はこう語っている。

「自分たちの作った音楽の、自分たちに対する声にできる限り一生懸命耳を傾けて……その結果、新しい扉がどんどん出てくるんだけど、基本的にやっぱり怖がりだから…で…根暗だから(笑)、怖いことが凄い増えて。だけどその新しいステップに曲をつれてってあげれるのは俺達しかいなくって。で、そこに行くことがその曲には必要で」

音楽がより多くの人達に届くことを望むがゆえに、それにふさわしい形としてさまざまな新しいことに挑戦したという、
とても明快な言葉だ。

そうした姿勢で回ったこの2014年のツアーは、同じ「WILLPOLIS」というタイトルが付いていた2013年のツアーとはまた違うものになった。
2013年のツアー「WILLPOLIS」では、ザイロバンド(LEDが点滅するリストバンド)や、チームラボボールの導入に驚いたが、
2014年のこのツアーではそうした演出面だけではなく、藤原の「いくぜ、お前ら!」に象徴されるメンバーのMCや表情、
そして何より、より熱を増し、より繊細さを増していく音楽そのものの変化・成長としてはっきりと表れた。
そのことのついても、本作のインタビューでチャマがしっかりと語っている。

「昔の曲を含めて、新たな側面を見せてくれと。“ガラスのブルース”って曲を2年前はこの角度から見てる。“虹を待つ人”が生まれました、じゃあこの角度が見えるようになった。じゃあ16ビートで走っていこう。そうやって音楽って進化していくのね」

そしてそのすべてが中盤で初音ミクとの共演という形で披露された“ray”でいったんクライマックスを迎える。
この曲こそは、新しい扉を開けて、音楽的にも進化して、そして曲としても新たな境地で書かれた、
バンプ・オブ・チキンの「今」を最も象徴する1曲だと思う。

そして終盤は“天体観測”、“ガラスのブルース”で盛り上がり、新曲“You were here”で終わる。




オープンになったバンプ・オブ・チキン、新しい扉を次々と開けていくバンプ・オブ・チキン、曲・音楽が導くままに勇気をもって前進していくバンプ・オブ・チキン―――
でも、ラストの“You were here”を聴けば、彼らが音楽をやっていくことに対しての思いや考えは何一つ変わっていないことがわかる。
音楽を通じて出会った時間の素晴らしさと、それが終わってしまうせつなさ。
そこで出会うことのかけがえなさと、そこでしか会えないことのせつなさ。
でも“You were here”は、その「せつなさ」を「刹那」の輝きの中で捉えるのではなく、
出会いの前にも後にもずっと続く思いや願いの中に優しく溶かし込んで、
聴く人みんなの生活の時間に寄り添いながら共有させてくれる。

これまでも藤原基央の中で「せつなさ」は強烈な感情として彼自身の心のなかにあった。
そしてそれは彼自身の最も強い表現衝動そのものだった。
でも“You were here”では、その気持はみんなひとりひとりの心に確かにあって、
その気持をみんなのそれぞれの生活の時間の中で噛み締めながら共有することができる、
ということが表現されている。
バンプが開いた、本当の意味での「新しい扉」は、テレビ出演や東京ドーム公演といった表面的なことではなく、
聴いてくれる人に対するさらに大きな「心の扉」なんじゃないかと思う。

藤原「今回のツアーには新しい扉を開けた結果がいろいろあったと思うけど、目の前で、その結果を受け取ったお客さんが返してくれるリアクションで『ああやっぱ間違ってなかったんだな』って。………どれほど救われたかですね」

(山崎洋一郎)
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