今週の一枚 ディアンジェロ&ザ・ヴァンガード『ブラック・メサイア』

今週の一枚  ディアンジェロ&ザ・ヴァンガード『ブラック・メサイア』

ディアンジェロ&ザ・ヴァンガード
『ブラック・メサイア』
2月4日発売


どこから聴いても傑作、名盤。かっこいい!
こんなアルバムを作れるのはディアンジェロしかいない。

のはわかってはいたのだが、なにしろ15年振りのアルバムである。
この時を待ち焦がれていた、といえば嘘になる。ちょっと忘れていた。


3rdアルバムである今作は、15年前のセカンド『Voodoo』よりもさらにエレクトリック・ギターがメインフィーチャーされた、
R&Bというよりもファンク、ファンク/ロック寄りの作品だ。
スライ&ザ・ファミリーストーン、ファンカデリック、プリンスからの強力な影響を隠すことなく、全面に押し出している。
そこにヒップホップ以降のベースの重さとビートのアタックが加わり、
さらにヴィンテージ機材での完全アナログ録音による音の活き活きした力も加わって、
(現代的最新タームは何一つないにもかかわらず)結果として2015年における最強の音楽の座に就くほどの完璧なファンク・ミュージックになっている。
特に“Betray My Heart”は、ビートのあり方、演奏のあり方、メロディーのあり方、録音のあり方、そして歌詞の内容も含めて、
音楽シーンの新たな指標となるべきあまりにも素晴らしい1曲だ。かっこ良すぎる。
繰り返しになるが、どこからどう聴いても傑作アルバムである。


このアルバムのタイトルは『ブラック・メサイア』で、言うまでもなく「黒い救世主」という意味だ。
今どき、ハッタリ勝負のヒップホップでもメタルでも「救世主」なんて言葉をタイトルに使わない。
今のポップ/ロックのシーンはこうしたタイトルを付けるメンタリティーとは真逆のところにある。
最近の音楽シーンで話題になったアルバムタイトルを思い浮かべてみてください。
ほとんどが個人的、断片的、散文的、無意味的だ。
ユニバーサルな視点に立って全人類に向かって放つようなセンセーショナルな言葉は避けられている。
今の時代はそうした視点に立って音楽を作ることは困難だからだ。
「個」の時代だからである。

 だが、ディアンジェロは、去年の黒人少年を警官が射殺して不起訴となった事件や11年のエジプト革命や11年に起きたウォール街での抗議活動に触発され、
そこで感じた怒りと立ち向かう勇気をモチベーションにして、
現代では困難なはずの「レベル・ミュージック」でもあり「ポップ・ミュージック」でもある本作を作り上げた。
そんなことができるアーティストが今のシーンに他に誰がいるだろうか。

「『ブラック・メサイア』は、アルバムに付けるものとしてはとんでもないタイトルだ。容易に誤解を招くだろうし、多くの人は宗教的なことを想像するだろう。人によっては俺が自分自身を『黒い救世主』と呼んでいると決め付けるかもしれない。だが、このタイトルは俺たちみんなのことを意味しているんだ。俺たちはみな『ブラック・メサイア』になれるよう志すべきなんだ。(中略)俺たちみんながリーダーなんだという感覚を示すものなんだ」(ディアンジェロ)


本当に、どこからどう聴いても、傑作だ。
(山崎洋一郎)
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