今週の一枚 クラウド・ナッシングス『ライフ・ウィズアウト・サウンド』

今週の一枚 クラウド・ナッシングス『ライフ・ウィズアウト・サウンド』

クラウド・ナッシングス
『ライフ・ウィズアウト・サウンド』
1月27日(金)発売

クラウド・ナッシングスの新作『ライフ・ウィズアウト・サウンド』は、間違いなく彼らの最高傑作だ。スティーヴ・アルビニをプロデュースに迎えたセカンド・アルバム『アタック・オン・メモリー』で、現在に至るクラウド・ナッシングスのオルタナティヴな音楽性の基礎が出来上がったと言っていいが、本作はその流れの頂点に位置するものだろう。

まずはサウンド・プロダクションが圧倒的に素晴らしい。プロデュースにスリーター・キニーやデス・キャブ・フォー・キューティー、ペイヴメント等アメリカン・オルタナものを数多く手がけたエンジニアあがりのジョン・グッドマンを迎え、これまでで最高と思える音に仕上がっている。とりわけディストーションの効いたギターのラウドでノイジーで、生々しく厚みのあるサウンドの、窒息しそうな音圧の心地よさと、音のシェイプの美しさ、テクスチャーの深さには抗いがたい。これこそがロックのギター・サウンドの醍醐味である。激しく熱く荒々しい演奏から、彼らの抱え込んでいたさまざまな鬱屈や屈折や内向したエモーションの数々が、ものすごい勢いで流れ出している。1年をかけてディラン・バルディが曲を書き、ツアーの合間にわずか3週間で録音したという制作過程は、本作が腰を据えてじっくりと練られ作られた部分と、勢いに任せてエネルギーの迸るまま演奏された部分の両面があることを示している。冷静と熱狂。緻密さと荒々しさ。洗練の巧みさと初期衝動の熱さ、対照的な両面のバランスの絶妙さが、本作の肝だ。

アルバム・タイトルの「音のない人生」について、ディランはこう語っている。

「誰しもが人生のなかで大切なものを見失ってるってことをあるとき気づいたんだ。見失っていることにさえ気づかないようなものをね。それがタイトルにも反映されてる。このアルバムは僕のバージョンのニュー・エイジ・ミュージックなんだ」

「人生で大切なものを失っていること」についての歌。アルバム・タイトルは2曲目の“Things Are Right With You”の歌詞からとっている。そこで歌われる喪失感や孤独感や不安感は、クラウド・ナッシングスの基調音として常に鳴り続けてきた。自分はいったい何者で、どこへ行こうとしているのか。生きることの意味、人生の意義への懐疑。だが本作のギター・サウンドの突き抜けたような爽快で開放的な音は、今、この場所でこそ自分たちは生きていくのだという力強くポジティヴな決意表明であるように聴こえる。

“Things Are Right With You”では、「No use in life without a sound」と歌われる。「この『音』のない人生なんて意味がない」と。この「音」だけが信じられる。この「音」さえあれば、生きていける。確かに信じられるのは、ここで鳴っているギターの音だけなのだ。彼らはそう言っているように思えるのである。(小野島大)
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