今週の一枚 ジュリアン・カサブランカス+ザ・ヴォイズ 『ティラニー』

今週の一枚 ジュリアン・カサブランカス+ザ・ヴォイズ 『ティラニー』

ジュリアン・カサブランカス+ザ・ヴォイズ
『ティラニー』
発売中


ニューヨークのロックンロールは特殊なものだ。
一つの独立した表現ジャンルと言っていいかもしれない。
ニューヨークのロックンロールは、常にニューヨークそのものを体現しているのだ。
それは、ニューヨークは土地ではなく、それ自体がメディアだからである。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドにしてもテレヴィジョンにしてもソニック・ユースにしてもヤー・ヤー・ヤーズにしても、
その時代、その時代のニューヨークそのものを体現している。
ロンドンもそうじゃないかと言われるかもしれないが、ロンドンはバンドの背景/土壌であり、表現のテーマそのものに大きく関与するほどのメディア性はない。

ストロークスもニューヨークを体現するバンドだった。
ストロークスが出てきた時、彼らの音楽を言い表すのに「ロックンロール・リバイバル」や「ガレージ・リバイバル」、「アート・ロック」といった言葉が人によってバラバラに使われたが、
つまりは「2000年代ニューヨーク」を体現するロックンロール・バンド、だった。
そこにもっとも自覚的だったのはジュリアンだった。

今回、ジュリアンが「このアルバムはストロークスのセカンドの続きだ」というようなことを言っているが、すごくうなずける。
これぞ、現代のニューヨークのロックンロール・アルバム。
今のメインストリームの音に亀裂を入れ、奇妙なデザイン・フォルムを映し出し、常識を欺く価値観を提示して、好き嫌いをはっきりと問いながら、スノビズムをくすぐってくる。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの音楽を聞いて最初から「最高!」といった奴が何人いただろうか?
ソニック・ユースの音楽を最初からめいっぱい楽しんだ奴が何人いただろうか?
ニューヨークのロックンロールはそういうものだ。
このアルバムも、まさにそういうものだ。
狂ったフォルムに自分の耳がどこまでついていけることができるか。
追いついた瞬間、このアルバムがどれだけかっこいいかがわかる。
そして同時に、実は非常にポップな作品であることに気づく。

このアルバムは、そこら辺のインディー・バンドが束になっても勝ち目はない傑作である。

では、今のストロークスはどうなのか?
ジュリアンが語っている通り、ストロークスはニューヨークを体現するバンドから徐々に「ストロークス」を受け入れ引き受けるバンドになっていった。
他のメンバーへの遠慮、気遣いもあったのだろう。
ストロークスは、非常に良質なアート・ロックのバンドとして、求められるストロークスに沿った範囲の中で進化してきたのだ。

このアルバムを聴いていると、ジュリアンの「このアルバムはストロークスのセカンドの続きだ」という言葉が、本当によくわかる。
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