今週の一枚 ザ・チェインスモーカーズ『ザ・チェインスモーカーズ―ジャパン・スペシャル・エディション』

今週の一枚 ザ・チェインスモーカーズ『ザ・チェインスモーカーズ―ジャパン・スペシャル・エディション』

ザ・チェインスモーカーズ
『ザ・チェインスモーカーズ―ジャパン・スペシャル・エディション』
8月10日(水)発売

アヴィーチーやスクリレックスといったトップアーティストたちは自身の音楽をアルバムというフォーマットに落とし込む方向に向かいつつあるものの、EDMとは今なお基本は曲単体として聴かれ、評価されるシングル・カルチャーのムーヴメントであると言っていいだろう。数万人のパーティをいかに瞬時に掌握するかの反射神経が問われるEDMアーティストたちは、曲単体、もっと突き詰めればキラーなワン・フレーズ、ワン・フックに全身全霊を傾けるシビアな勝負を続けている。

そんなパーティ対応を一義としたEDMを理解する上で、このザ・チェインスモーカーズの日本独自企画のデビュー・ミニ・アルバム『ザ・チェインスモーカーズ―ジャパン・スペシャル・エディション』は格好のサンプルとなるはずだ。これまでに彼らがリリースしてきたヒット・ソングをコンパイルした本作には、もちろんアルバムとしての脈絡はないが、逆にだからこそEDMにおけるソングライティングの教本的一作になっているのだ。

ザ・チェインスモーカーズはNY在住のDJ兼プロデューサー・デュオ。2014年に発表した“# SELFIE”が爆発的ヒット、そのキャッチーすぎるサウンドと「自撮り」という身も蓋もないネタからして偉大なる一発屋として終わるかと思いきや、その後も二発(“Roses feat. ROZES”)、三発(“Don't Let Me Down feat. Daya”)と恐ろしい高打率でヒットを決めていき、現時点での最新シングル“Don't Let Me Down”は全米シングルチャート20週連続ランクイン&3位獲得という最大のヒットになった。

チェインスモーカーズのサウンドは「歌物EDM」と呼ばれる一派で、基本すべてのナンバーにヴォーカルがフィーチャーされ、しかも彼らの場合はヴォーカルの大半が女性アーティストであるのが特徴だ。女声はEDMのアッパーでジョイフルな、一方向に限定された力の向かい方を緩和させる効果があって、たとえばシーアやロードのようなダークでどこかメランコリックな感触を持つ女性ヴォーカルが、ド派手なシンセなレイヤーとハウス・ビートと絡まり合う、その相乗効果と言うか美味しいとこ取りを、想像していただければいいかと思う。

ちなみに彼らは下積み時代にヨンシーやトゥー・ドア・シネマクラブ、バンクスらのリミックスを手掛けるなど、けして真性EDM一辺倒な才能ではない。広範囲のバックグラウンドを持つディープな音楽ファンであるはずの彼らが、腹を括ってEDMの売れ線ど真ん中の軽薄を引き受けているのがチェインスモーカーズなのだ。彼らの音楽オタクな側面が露になる可能性があるとしたら、それはもちろんアルバムを作った時だと思うが、サマーソニックでの彼らの来日を控えたこの夏のサウンドトラックとしては、『ザ・チェインスモーカーズ―ジャパン・スペシャル・エディション』は過不足なくパーフェクトな一枚だと思う。

ちなみにアレッソと共に今年のサマソニを象徴するEDMアクトであるチェインスモーカーズは、ビーチ・ステージに登場。特にラガなノリが強めな“Don't Let Me Down”なんて、ピースでチアフルな空気が流れているビーチの熱い砂浜にはずっぱまりだろう。(粉川しの)
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