今週の一枚 リンキン・パーク 『ワン・モア・ライト』

今週の一枚 リンキン・パーク 『ワン・モア・ライト』
リンキン・パーク
『ワン・モア・ライト』
5月19日発売

前作『ザ・ハンティング・パーティー』での衝動剥き出しのダイナミズムと熱量に満ちた音像から一転、ディストーションサウンドをほぼ一掃して、過去最高にハイパーなサウンドスケープを編み上げた、リンキン・パーク3年ぶりの新作アルバム『ワン・モア・ライト』。

しかし、今作はむしろ、リンキン・パーク史上最大級のヘヴィネスを、「自我の爆発」に留まらないスケール感と輝度と訴求力を備えた表現へと昇華するためのトライアルの結晶である――ということが、冒頭の“ノーバディ・キャン・セイヴ・ミー”をプレイした瞬間に一発で伝わる。そういう作品だ。

現在発売中の『rockin'on』6月号掲載のインタヴューで「このアルバムでは、初めてサウンドではなくて、言葉から書き始めたんだ」とマイク・シノダが語っていたことからも、この『ワン・モア・ライト』という作品は「意味がサウンドを規定した」作品であることがわかる。

「リンキン・パーク史上最も『ポップ』な音像に“ノーバディ・キャン・セイヴ・ミー” “バトル・シンフォニー”“ヘヴィー”“ソーリー・フォー・ナウ”といった切迫感に満ちたタイトルが乗っている」のではない。
シリアスで切実な想いをもって時代の・世界の・人間のヘヴィネスと向き合い、ミュージシャンとして/表現者としての冒険心とクリエイティヴィティの限りを尽くして「救い」へと昇華するために、彼らはこの音を必要としたのだろう。

リリース前に公開された動画の中でシノダが「最もポップで最もリスキーなアルバムを作りたい」と明かしていた通り、己のアイデンティティに固執することなく、作曲段階から外部アーティストと積極的にコラボレートを重ね、サイバーな聖歌とでも呼ぶべき透徹した音空間を実現するに至ったリンキン・パーク。
もともと自らロックを標榜してきたバンドではないにもかかわらず、そのハイブリッドロックの鮮烈なダイナミズムによって00年代以降のモダンロックの象徴的存在となってきた彼らが、己の存在を賭して新たな音楽の可能性へと身を投じたことには感激を禁じ得ない。

今作を「ロックが売れないUSシーンを『ポップ化』によって生き抜くための試行錯誤」というステレオタイプな視線から位置付けようとすると、今作の目映い歌とサウンドの本質を大きく見誤ることになるだろう。
人間が音楽を求める理由そのもののような神秘的な美しさを、このアルバムは確かに宿している。

11月にはONE OK ROCKをゲストに迎えた来日公演も決定している。「ライヴでは、ヘヴィーなギター・サウンドが存分に聴ける」とロブ・ボードンは前述のインタヴューで語っていたが、僕はむしろ『ワン・モア・ライト』の楽曲が幕張メッセでどんな音風景を描き出すのか?のほうが楽しみで仕方がない。(高橋智樹)

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