今週の一枚 マデオン『アドヴェンチャー』

今週の一枚 マデオン『アドヴェンチャー』

マデオン
『アドヴェンチャー』
4月1日発売


最近で言えばディスクロージャーの『セトル』を初めて聴いた時の高まりを一聴して思い出させた。それはつまり、ダンス・ミュージックと呼ぶことはできても、そのひとつに括ることは決してできないということだ。最新型のポップ・ミュージックでありながら、長く聴かれ、究極的に聴き古されたとしてもその本質が決して削がれることのない音楽。マデオンはそんな領域に、ファースト・アルバムで、二十歳そこそこで、あっけらかんと辿り着いている。

素晴らしいのは、そんな大層なことをやっているのに、肩肘張ったところが一切ないことだ。そして、そんな大仰そうなことをやっているのに、このアルバムが、あくまでも私小説的なプライベート感を湛えながら、万人にリーチする物語として成立していることだ。

マデオン自身、この『アドヴェンチャー』とは、自らの10代を焼き付けたものだという。初めて好きになり、初めて自分の人生を変えた音楽や、DJとして世界をツアーするなかで得た体験etc。なかには、苦い記憶もあるはずだろうに、このアルバムには、徹底してファンタジックでスペイシーなサウンドが貫かれている。そして、そのサウンドのなかで、まるでおとぎ話の主人公のように、高揚したり、何かと闘ったり、夢を見たり、現実と向き合ったりしている。そのエモーションの起伏の付け方が本当に見事だ。EDMの若手としても知られるマデオンが、こうしたトータリティのあるアルバムを作り上げたという意味でも、意義深いことである。
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