今週の一枚 ベック“Dreams"

今週の一枚 ベック“Dreams"

ベック
“Dreams"
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オフィシャルサイト上でいきなり新しいアートワークが発表され、LAのラジオ局の取材でアルバムリリースを控えていることをアナウンス、インスタグラムやツイッター上などでのプレビューを経て公開されたベックの新曲“Dreams ”。多くのビッグネームがもはやネット上でいきなり音源をリリースするようになって久しいが、ベックに関してはオンラインのメリットを活かしたこういう取り組みは新鮮に映る。他アーティストがオンライン上で演奏していった楽譜アルバム『ソング・リーダー』はあったものの、むしろ何しろ直近の『モーニング・フェイズ』が6 年ぶりのアルバムだったのだから、時代背景を考えると当然と言えば当然だろう。

でも、SNSを通じてこんなふうにゲリラ的にハプニングをもたらすというのは、ベックが90年代から音楽、アティテュード、そのすべてに貫いてきた、平たく言うところのDIYの究極の方法論であり、デジタルVSアナログとかそういう一義的な話を超えて、彼の流儀にとてもしっくりくる。

そんなわけでこの曲、聴いての通りサマー・アンセムとでも言うべきダンス・ナンバー。昨今の若手エレポップ勢が羨望の眼差しを向けているだろう、インディ・ポップ/ロックとメインストリームのギラギラ感のハイブリッドぶりが完璧な一曲である。超ポップで超アッパーで超キラーで一瞬ハラハラするほどだ。なのに、終盤にかけての変てこな展開はザッツ・ベックなサイケでニヤり。

楽曲を一緒に書いたのは『ジ・インフォメーション』で初めてタッグを組んだ(のちに『モダン・ギルト』にも関わった)グレッグ・カースティン。あれからおよそ10年、グレッグもグラミーにばんばんノミネートするメインストリーム御用達のミュージシャンになったが、そんな彼と共同で曲を書き、ファニーなファルセットを披露するベックのヴォーカルが久しぶりにダンスしていると考えると感慨深い。もうひとつ、この曲を一緒に書いているのがマイク・スノウのアンドリュー・ワイアットだという点も外せない。『モーニング・フェイズ』でのグラミー受賞で完全復活のモードに拍車がかかったのか、またはそれを逆手に取ったのか、ケミカル・ブラザーズとのコラボレーションで再びこっちのギアが入ったのか、FUN.のネイト・ルイスソロ作への参加でさらに触発されたのか、はたまたまったく関係なしにこうしたトラックが『モーニング・フェイズ』以前から溜まっていたのか(おそらくそのよう)、とにかく次作からの新曲なのである。ちなみに本人がラジオで話したところによれば、アルバムはかなり多岐に亘る内容になっているとのことで、期待して間違いないだろう。
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