今週の一枚 デヴィッド・ボウイ『ウェルカム・トゥ・ザ・ブラックアウト~ライヴ・ロンドン’78』

今週の一枚 デヴィッド・ボウイ『ウェルカム・トゥ・ザ・ブラックアウト~ライヴ・ロンドン’78』 - 『ウェルカム・トゥ・ザ・ブラックアウト(ライヴ・ロンドン‘78)』『ウェルカム・トゥ・ザ・ブラックアウト(ライヴ・ロンドン‘78)』

デヴィッド・ボウイ
『ウェルカム・トゥ・ザ・ブラックアウト~ライヴ・ロンドン’78』
7月25日(水)発売


今年の4月の「レコード・ストア・デイ」で限定発売されたヴァイナル盤のCD/デジタル化。1978年3月から同年12月まで行われた『Isolar Ⅱ Tour』のうち、6月30日と7月1日、ロンドンのアールズ・コートで行われたライブの実況盤だ。つまり同年4〜5月のアメリカ・ツアーを収めた『ステージ』の直後の演奏ということになる。曲目・曲順とも『ステージ』2017年CD版とほぼ同じだが、収録曲はこちらの方が2曲多い。目玉は“サウンド・アンド・ヴィジョン”のライブ初披露時の音源が収められていること。プロデュースと録りはトニー・ヴィスコンティだが、ミックスはボウイ自身とデヴィッド・リチャーズ(後にボウイの『ネヴァー・レット・ミー・ダウン』をプロデュース)が手がけている。録音状態はクリアではあるが、やや痩せた感じで、『ステージ』に比べると迫力や臨場感に欠けるのが、当時リリースを見送られた理由だろうか。『ロウ』、『ヒーローズ』収録曲を中心とした前半と、それまでのヒット曲を中心とした後半の2部構成なのは、同年12月の日本ツアーと同じ。まだ客電がついたままのNHKホールのステージにメンバーがゾロゾロと登場し、いきなり“ワルシャワの幻想”を演奏し始めた時の衝撃は、未だに忘れようと思っても忘れられない。単にショウのあり方として目新しいという以上に、新しい時代のロックの幕が開いたという鮮烈なまでの実感があった。本作を聴いてもその記憶が蘇ってくる。やはり前半部の、冷たい熱気が立ち上ってくるような異形の音像に肌が粟立つ。

エイドリアン・ブリューとカルロス・アロマーというエクセントリックなツイン・ギター態勢に、ジョージ・マーレイとデニス・デイヴィスという鉄壁のリズム隊、ユートピアのロジャー・パウエル等を加えた8人編成のバンドは、ジギー時代の曲ではやや厚ぼったくなるものの、ボウイのバンド史上、最強のラインナップのひとつだろう(もうひとつは2003〜2004年に行われ、結果的に最後となった『リアリティ・ツアー』の時のバンド)。ボウイの喉の調子も申し分ない。後半部のクライマックスは、“ステイション・トゥ・ステイション”。パウエルがプレイする重厚なシンセサイザーに導かれ、ブリューの美しい獣の咆哮のようなギターが1分以上も続き、ゆっくりと曲のテーマが立ち上がってくる長いイントロの部分は、当時のボウイが到達した最高のエクスタシーだ。

さて、次は1978年12月日本公演の映像化でしょうか。まだいろいろとブツは残ってると思うので、楽しみだ。(小野島大)
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