今週の1枚 今週も引き続きテイラー・スウィフト『1989』をさらにレヴュー!
2014.11.03 07:00
テイラー・スウィフト
『1989』
発売中
2週連続で「今週の1枚」に取り上げる異例のケースとなったことをお許し頂きたい。
それほどの素晴らしいアルバム。
テイラー・スウィフトというアーティストを100%表現した作品であり、
大衆が今まさに求めているポップ・ミュージックを100%実現した作品でもあるという、
その両方を完璧に実現した、奇跡的と言ってもいいアルバムだ。
まず、このジャケット。
自分自身のポラの写真である。
そして1989は彼女が生まれた年で、文字は彼女自身がマジックで書いたもの。
いま世界で最も注目を集めるスーパースターの注目のニュー・アルバムのジャケットが、
ポラ写真とマジックの手書き文字、それだけで作られている。
よく考えたら凄いことだ。
著名なフォトグラファーも大掛かりなアートディレクションも巨額の制作費も一切使わず、
自分のポラ写真と手書き文字だけ。
つまり、このアルバムは100%自分自身なのだという表明である。
ちなみにこのアルバムには彼女のヴォイス・メモが3曲分収録されている。
曲を思いついた時にその場で簡単に録音した、まさにメモとしてのデモ・トラックだ。
これもまた、このアルバムは自分自身から生まれた表現なんだ、というメッセージを伝えている。
一方、サウンドはその真逆の発想で作られている。
半数以上の曲が打ち込みのエレクトロニックなサウンドで、
それぞれの楽曲を最大限にポップでフレッシュに聴かせるためにアレンジャー/プロデュサーに委ねられている。
今のポップ・ミュージックの最前線をとらえ、リスナーがテイラーに求めるものの1歩先にある新鮮な喜びを提示するという徹底的に「ポップ」な姿勢で作られているのだ。
完全に100%「自分」の表現であると同時に、
完全に100%「みんな」のための音楽なんだ、
という究極の「ポップ」。
それが24歳の女の子によってこんなにもクリアーに示されたというのは、
快挙と言っていいと思う。
ダンスナンバーからバラードまでどの楽曲も粒ぞろいで、
言うまでもなく歌もトラックもフレッシュでハイクオリティー。
このアルバムは、表現者としてテイラー・スウィフトの評価を不動のものにするだろう。
それと同時に、ポップ・アルバムの新しいスタンダードとして多くの人々に長く愛されるだろう。
まるでポップ・ミュージックの幸福がそのまま形になったようなアルバムだ。