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    今週の一枚 R.E.M.

    今週の一枚 R.E.M.

    R.E.M.
    『アンプラグド1991&2001コンプリート・セッションズ』


    素晴らしい。
    解散から2年半、思いもかけずこんなに素晴らしいアルバムが届いた。
    これは解散後のビッグネームにありがちな無理矢理な発掘音源でもなければ、
    マニアのためのレア音源集でもない。
    オリジナル作品と同等かそれ以上の価値を持つ、
    質も完成度も芸術的価値もポップ・アルバムとしての商品性も高い、申し分のない作品だ。

    2枚組のライブ・アルバムで、内容はいわゆるMTVアンプラグドである。
    今年の「レコード・ストア・デイ」に4枚組アナログ盤としてアメリカで限定販売されたものをCD化したもの。
    DISC1は91年。
    インディーからワーナーに移籍してロック・シーンの頂点に立ったと言っていい時期である。
    グランジの勃興と時は同じくしているが、R.E.M.の評価やポジションはそれによって一切揺るがなかった。
    DISC2は2001年。
    ドラマーのビル・ベイリーが脱退し、3人になって危ういアルバム『UP』をリリースした後に完全復活作『リヴィール』の時期である。いわば後期R.E.M.のピークの時期だ。
    R.E.M.がMTVアンプラグドに出演したのはこの2回だけである。

    文字通りアンプラグドで演奏されるR.E.M.の20年間の名曲の数々。
    80年代以降のアメリカのロックの良質なソング・クロニクルと言っていいと思う。
    アンプラグドだからといって、バンド・アレンジの原曲とは違う解釈をしているわけでもなく、ミニマムな弾き語りにしているわけでもない。
    基本的にはエレクトリックな音をアコースティックにしただけのシンプルなアンプラグド・バージョンで歌われていく。
    ロック・バンド・バージョンで聴いても、こうしてアンプラグド・バージョンで聴いても、
    ほとんど浮かぶ光景も印象も変わらない。
    いかにR.E.M.の曲とマイケル・スタイプの歌詞と歌声が普遍的で大きなスケールを持っているかに改めて感嘆する。

    そしてもうひとつ改めて感嘆するのは、こうしてシンプルな形でほぼ全キャリアの歌を聴くと、あれほどオルタナ性を感じたR.E.M.の曲がまるでクラシック・ロックの名曲のようであり、
    また同時に、90年代の退屈と終末感を同時代的に体現していたと思っていた曲が、10年代の今のフリー・フォークのフィーリングまで先取りしていたというタイムレスな魅力だ。
    iPodに入れて2枚組をフルでリピートしながら歩けば、日常が文学になり、風景が映画になる。
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