今週の一枚 R.E.M.
2014.06.23 07:00
R.E.M.
『アンプラグド1991&2001コンプリート・セッションズ』
素晴らしい。
解散から2年半、思いもかけずこんなに素晴らしいアルバムが届いた。
これは解散後のビッグネームにありがちな無理矢理な発掘音源でもなければ、
マニアのためのレア音源集でもない。
オリジナル作品と同等かそれ以上の価値を持つ、
質も完成度も芸術的価値もポップ・アルバムとしての商品性も高い、申し分のない作品だ。
2枚組のライブ・アルバムで、内容はいわゆるMTVアンプラグドである。
今年の「レコード・ストア・デイ」に4枚組アナログ盤としてアメリカで限定販売されたものをCD化したもの。
DISC1は91年。
インディーからワーナーに移籍してロック・シーンの頂点に立ったと言っていい時期である。
グランジの勃興と時は同じくしているが、R.E.M.の評価やポジションはそれによって一切揺るがなかった。
DISC2は2001年。
ドラマーのビル・ベイリーが脱退し、3人になって危ういアルバム『UP』をリリースした後に完全復活作『リヴィール』の時期である。いわば後期R.E.M.のピークの時期だ。
R.E.M.がMTVアンプラグドに出演したのはこの2回だけである。
文字通りアンプラグドで演奏されるR.E.M.の20年間の名曲の数々。
80年代以降のアメリカのロックの良質なソング・クロニクルと言っていいと思う。
アンプラグドだからといって、バンド・アレンジの原曲とは違う解釈をしているわけでもなく、ミニマムな弾き語りにしているわけでもない。
基本的にはエレクトリックな音をアコースティックにしただけのシンプルなアンプラグド・バージョンで歌われていく。
ロック・バンド・バージョンで聴いても、こうしてアンプラグド・バージョンで聴いても、
ほとんど浮かぶ光景も印象も変わらない。
いかにR.E.M.の曲とマイケル・スタイプの歌詞と歌声が普遍的で大きなスケールを持っているかに改めて感嘆する。
そしてもうひとつ改めて感嘆するのは、こうしてシンプルな形でほぼ全キャリアの歌を聴くと、あれほどオルタナ性を感じたR.E.M.の曲がまるでクラシック・ロックの名曲のようであり、
また同時に、90年代の退屈と終末感を同時代的に体現していたと思っていた曲が、10年代の今のフリー・フォークのフィーリングまで先取りしていたというタイムレスな魅力だ。
iPodに入れて2枚組をフルでリピートしながら歩けば、日常が文学になり、風景が映画になる。