今週の一枚 ザ・ストラッツ『エヴリバディ・ウォンツ』

今週の一枚 ザ・ストラッツ『エヴリバディ・ウォンツ』

ザ・ストラッツ
『エヴリバディ・ウォンツ』
2月3日(金)発売

ザ・ストラッツは2012年結成、2016年にデビュー・アルバム『エヴリバディ・ウォンツ』をリリースした英ダービー出身、現在はLAを拠点に活動を続ける4ピース・バンドだ。本作は約1年遅れでようやくリリースされる『エヴリバディ・ウォンツ』の日本盤となる。

そう、ストラッツはこの2010年代の現在進行形のニューカマーである。しかし日本盤のジャケット写真にも露なように、思いっきりオールドスクールでグラマラスな彼らの佇まいには2010年代の同時代性みたいなものは全くと言っていいほど感じられない。ボーカルのルーク・スピラーは声が激似ということでしばしばフレディ・マーキュリーと比較されているが、激似なのは声だけではくビジュアルもモロだ。しかも髪型といいファッションといい『戦慄の王女』、『クイーンⅡ』あたりのフレディ、1973&74年頃のフレディに的を絞って寄せてきているあたりも凄い。

同時代性が感じられないのはビジュアルだけではなくて、サウンド自体ももちろんそうだ。前述のクイーンを筆頭に、ストラッツのサウンドを構成しているのは70年代のローリング・ストーンズのロックンロールやモット・ザ・フープルやスレイドのグラム・ギター、モトリー・クルー、はたまたスキッド・ロウあたりも彷彿させるご機嫌でダーティーなメタル・サウンド、ボン・ジョヴィにも匹敵するどキャッチーな大振りアメリカン・ロックまで、見事にオールドウェイヴな路線を突き進むものだ。キャッチーと言えばキッスとの相似形も外せないだろうし、曲によってはザ・キンクスやビートルズ直系のメロディが根底に流れており、この点がさすがは英国出身ということだろうか。

「読んでももらえない物語みたいな人生はイヤだ / キラキラと華やかに生きていたい」と歌われる“Could Have Been Me”のように、彼らはこのスタイルを再解釈やクリシェではなく、100%本気でやっている。ストラッツには同時代性が皆無だと最初に書いたけれど、むしろ同時代性という名の同調圧力から自由に自分たちのやりたいサウンドを選び、突き詰めていくのが、昨今の新世代アクトに共通したマインドでもある。むしろ彼らのオールドスクールっぷりに突っ込むほうが中年リスナーのヤボというものだし、そもそも突っ込む隙が一瞬も与えられないほどアルバム全編がフック状態の過剰さで、これを楽しめないほうが負けというのは昨年のサマソニのステージでも証明されていたものだ。

2000年代に10代の思春期を過ごしたUKキッズらしく、彼らのロック原体験はリバティーンズやオアシスだったそうだが、そこから自分たちに最もしっくりくるサウンドを求めて遡っていくうちに70年代のグラム・サウンドに出会い、「これだ!」となったという。ストラッツのオールドスクールなロックンロールをやりきる力、信じきる力は、彼らがそれに出会い、摑み取ったものと言うよりも、ロックンロールのほうが彼らを「選んだ」、彼らに「託した」結果に思えるのが、このバンドの強みであり、幸福だ。彼らがモトリーやガンズ、ストーンズらに気に入られ、次々とツアーのサポート・オファーが舞い込んだのは、レジェンドたちはストラッツとロックンロールのその幸福な関係を、実体験として知っているからかもしれない。(粉川しの)
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