大物アーティストの来日が相次いだ2025年、年間ベストライブを選ぶのもなかなか大変なところがあるが、この12月、実に2013年以来となる日本上陸を果たしたトゥールの来日公演の鮮烈な余韻は、かなり後を引くものだった。筆者は12月11日、Kアリーナ横浜での公演を観たが、それ以前に観てきたさまざまなライブの記憶が霞んでくるほどだった。
誇張は避けたいので事実に忠実に書いておくと、スタンド席の最上層は閉鎖された状態にあり、2万人収容規模のこのアリーナがフルの状態で使用されていたわけではない。しかしそれでも客席がぎっしりと人で埋め尽くされている図は壮観だったし、外国人来場者の割合の高さも目についた。会場で顔を合わせた知人たちの多くは「トゥールのファン、実はこんなにいたんだ!」「この人たちは普段どこに隠れてるんだ?」などと言っていたが、来日公演がなかなか実現しないうえにリリースの周期も長いこのバンドが、実は着々と支持層を広げていたことがうかがえる結果となった。実際問題、イベンター側としてもトゥールの集客力について読み切れない部分があったのではないかと想像するが、今回の実績によって次の機会に向けてのプランも立てやすくなるのではないだろうか?
観客に撮影されることを嫌うメイナード・ジェームス・キーナンの意思表示もあったため、スマホを掲げた前列の観客に視界を遮られることも、それが発する光に邪魔されることも皆無だった(アンコール最後の1曲のみ、メイナード自身の口から撮影許可が告げられ、その際だけは一斉にスマホが掲げられた)。というか、それ以前に、オーディエンスの多くは撮影することなどに気が回らないほどの没入感を味わっていたに違いない。
フロントマンという肩書ではあってもステージの前線に立つことはなく、MCもほとんどしないメイナードが、最後の最後に再会を約束するかのような言葉を残してステージを去ったのも印象的だった。次の機会は、思いのほか早く巡ってくるかもしれない。それを期待しつつ、本誌2月号に掲載のライブレポートで今回の素晴らしいライブパフォーマンスについて反芻してみて欲しい。(増田勇一)
トゥールの記事が掲載されるロッキング・オン2月号