今週の一枚 ブロック・パーティー『ヒムズ』

今週の一枚 ブロック・パーティー『ヒムズ』

ブロック・パーティー
『ヒムズ』
2016年1月29日(金)発売

大胆なシンセのポルタメントが交感神経を心地好く掻き乱す冒頭の“The Love Within”、ミュート・ギターのメランコリアの果てにかすかなゴスペルの光を灯すような“The Good News”をはじめ、それこそ音の点描画と呼びたいくらいに削ぎ落とされたミニマルな音像。ポスト・パンク/ニューレイヴ・リヴァイヴァルの先陣を切っていた1stアルバム『サイレント・アラーム』期のラフでアグレッシヴなサウンドが嘘のように、丹念に一音一音が配置された風景の中から、冷徹なポップと濃密なメランコリアが立ち昇り、やがて抑え難い高揚感を描き出していく――ブロック・パーティーの約3年半ぶり5thアルバムとなる『ヒムズ』は、バンドが獲得した(正確には「獲得せざるを得なかった」だが)新たなアイデンティティをはっきりと物語っている。

今にして振り返れば、ヘヴィなギターサウンドに振り切った前作4th『フォー』(2012年)も、4年間の活動休止を経た上での「復活作」であり「新機軸」だった。が、『フォー』をリリースした後、マット・トン(Dr)が2013年に、ゴードン・モークス(B)が2015年に相次いで脱退。一時はケリー・オケレケ(Vo・G)とラッセル・リサック(G)の2人体制となった。我々リスナーの目から見れば「オリジナル・メンバー2人脱退」「バンドの危機」であり、残ったケリー&ラッセルにしても決して心中穏やかではなかっただろうが、同時にケリーとラッセルの中には、別のヴィジョンが広がっていたのだろう。2002年に4人でバンドを結成するさらに前、2人が出会った頃のアートロック気質に満ちたクリエイティヴィティが。そう、ブロック・パーティーの劇的な変化を焼き込んだ今作『ヒムズ』は、言わばケリーとラッセルにとっての「原風景」でもあったということだ。

その後、ジャスティン・ハリス(B)と紅一点:ルイーズ・バートル(Dr)を加えた新ラインナップでレコーディングされた今作。ロック/テクノ/カントリー/アンビエントなど多彩な要素を、精緻かつ自由闊達なアイデアで構築&解体して編み上げた『ヒムズ』のサウンドからは、2度にわたる活動休止が結果としてケリー&ラッセルの世界観をより純化させる濾過装置として機能したことがリアルに伝わってくる。音楽と/時代と/シーンと向き合う新たなスタンスを提示した今作から、ブロック・パーティーはどこへ進んでいくのか?――といやが上にも期待せずにいられなくなる1枚だ。(高橋智樹)
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