今週の一枚 ジャスティン・ティンバーレイク『マン・オブ・ザ・ウッズ』

今週の一枚 ジャスティン・ティンバーレイク『マン・オブ・ザ・ウッズ』

ジャスティン・ティンバーレイク
『マン・オブ・ザ・ウッズ』
2月2日発売


前作『20/20 エクスペリエンス 2/2』以来4年半ぶりとなるジャスティン・ティンバーレイクの新作だが、サウンドのスタイルなどはしっかりアーバン・ポップとなったものになりつつも、ジャスティン自身のアイデンティティを打ち出したという意味ではこれまでにない画期性を含んだ作品になっている。

そもそも前作2枚の『20/20 エクスペリエンス』『20/20 エクスペリエンス 2/2』の制作中には女優のジェシカ・ビールと結婚し、その後子供にも恵まれたジャスティンは自分の生活のプライオリティーが相当に家族に移ったことをそのまま今回の作品のテーマに持ってきており、さらにそのためには自分のより素の表情を明らかにしようという試みをこの作品でしている。

歴史に名を残す究極のポップ・ユニットとなったボーイ・グループのインシンクから、よりコンテンポラリーなソロR&Bアーティストへと自身の活動をかじ取りしてきたジャスティンは、これまで自分のイメージのあり方については相当に念入りに取り組んできたはずだ。特にアーバンR&Bというのは自身の憧れでもあったものだから、これまでのジャスティンの歩みは完璧に自分のイメージ通りに形にしてきたものだったはずだ。

しかし、今回のアルバムでジャスティンは家族に恵まれたテネシー州メンフィス出身の男子としての自分を打ち出そうとしていて、そのためには当然、メンフィスという地方性、さらにブルースやカントリーなどのサウンドも取り込まれることになる。

ただ、自分のオーディエンスはあくまでもアーバンR&Bとしてのジャスティンを聴いてきたファンであって、そんなファンやリスナーの期待を裏切るわけにもいかない。だったら、そのどっちもやるしかないというのがこのアルバムのとてつもない試みなのだ。

オープナーを飾るのはこれまでずっとメイン・プロデューサーとなってきたといってもいいティンバランドによる“Filthy”。はねまくるベース・ラインが延々と続くファンクに合わせて、外野からなにをいわれようとも我が道をゆくのみという俺様節を披露し、頼もしいオープニングとなっている。


続くは強烈なアップテンポのファンク・ナンバー“Midnight Summer Jam”で、今度は地元メンフィスの音楽への情熱を吹聴する内容だ。スタイルそのものはかなりノスタルジックなものだが、ザ・ネプチューンズのエキセントリックなアレンジでどこまでもモダンなサウンドに仕上げられているし、ファルセットを多用するジャスティンの刺激的なボーカルともどこまでもしっくりくるものになっていてあまりにも見事な出来なのだ。

実は今回のアルバムはネプチューンズのプロデュースがほとんどで、ネプチューンズが起用されるのはファースト・ソロ『ジャスティファイド』以来のことだ。もちろん、オープナーの"Filthy"のほかに、ソングライターとしても活躍するカントリー・アーティストのクリス・ステイプルトンとの共演曲でカントリー系のロック・バラードとなった"Say Something"でもティンバランドは起用されており、この曲にモダンなグルーヴを加えるプロデュースを施しているが、基本的にこのアルバムはネプチューンズと制作したものになっている。

今回なぜここまでドラスティックにネプチューンズに比重を移したのかといえば、やはり今回のメンフィスや素の自分をテーマにしたいというジャスティンの意図に最もネプチューンズがかなっていたからだ。


もちろん、ティンバランドの"Say Something"もしっかりカントリー・ロック・バラードをモダンに鳴らすものになっているが、アルバム・タイトル・トラックの"Man of the Woods"こそがこのアルバムでジャスティンが目指す内容とサウンドになっている。

無粋なところもあるけれども俺は田舎の男でそれを誇りに思っていると歌い上げるこの曲は、ほとんど60年代のサザン・ソウルのような構造と節回しを持つ曲で、これをまともにバンド演奏で形にしたらそれこそクラシックなソウル曲となるはず。しかし、これをどこまでもポップなアーバン・ソウルに作り変えるという使命に見事に応えているのが今回のネプチューンズなのだ。

あるいはフォークがかったカントリー・バラードともいえる"Flannel"もまた、フランネル・シャツを普段から着ている田舎育ちの自分と相手との心の交流を歌っているもので、これにもまた絶妙なアレンジがこの曲のメロディを際立たせており、このアルバムに特徴的な曲になっている。


もちろん、ジャスティンの身上ともいえる極上で洗練されたダンス・ポップ・ナンバーも"Breeze Off the Pond"、"Young Man"など多数揃えてあるし、そういう意味でも聴きどころ満載だ。

ただ、"Montana"のように、このアルバムの中でも最高峰ともいえるアーバン・グルーヴに乗せて、交際相手と出かけた山々の近くでの熱い関係を綴り、エンディングでは山岳風景で有名な「モンタナ」をひたすら連呼するこのあまりのミスマッチ感を抗いようのない魅力的なサウンドとメロディでまとめてしまう、ジャスティンとネプチューンズの異常な力業。これこそがこのアルバムの醍醐味なのだ。

2月4日のスーパーボウル・ハーフタイム・ショーでもどの曲を取り上げるのか、注目されるところだ。(高見展)
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