今週の一枚 プリンス

今週の一枚 プリンス

プリンス
『サイン・オブ・ザ・タイムズ』


アルバム『サイン・オブ・ザ・タイムズ』をリリースした直後のツアーのライブ・フィルム作品。サウンドが新しくマスタリングされてDVD/Blu-rayでリリースされる。

この前のツアーの横浜スタジアムでのライブがザ・レヴォリューションとしてのラスト・ライブで、それは本当に感動的なライブだった。
そして、メンバーも一新して、ドラムにシーラE、コーラスとダンサーにキャットを迎えての、これはこれでゴージャスな編成。
数少ないプリンスのライブ映像作品の中でもNo.1で、僕もこれまで何度観たかしれない。

アルバム『サイン・オブ・ザ・タイムズ』の時期は、プリンスのイマジネーションがピークを迎えていて、これまで聴いたことのないようなあらゆるサウンド、アレンジ、メロディーが「ファンク」の名のもとに溢れ出ていた時期だ。
ライブではそのすべてが肉体化されて生のエネルギーが注ぎ込まれ、そして完璧なクオリティーで披露されている。あらゆるシーンで、観ていて戦慄が走る。神がかっているとすら言える。

昔、僕はミネアポリスにあるプリンス所有のペイズリー・パーク・スタジオに行ってライブのリハーサルを取材したことがあった。
プリンス本人はもちろん、メンバー全員が演奏し、コーラスを歌い、踊りや振り付けを分担して、一瞬の気を許す隙もないライブが作られていた。
だが、プリンスはある曲の間奏部分で「いま、キーボードプレイヤーの左手が遊んでるね。ダメじゃないか。タンバリンを振ろう」と指示を出していた。
ステージ上の誰一人として一瞬も隙があってはならないのである。
これが世界のエンタテインメントか、と感動したのを今も強烈に憶えている。
(そういえば、ポール・マッカートニーもグリーンデイも、ステージ上でペットボトルで水を飲んだりすらしないよね)

アーティストとしての才気走った先鋭性と、磨かれた肉体性と、隙のないエンタテインメント性が極められていた、この当時のプリンス。
4曲目の“ハウスクエイク”だけでもいいから、この衝撃に触れてほしい。
山崎洋一郎の「総編集長日記」の最新記事
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