今週の一枚 ノエル・ギャラガー『チェイシング・イエスタデイ』

今週の一枚  ノエル・ギャラガー『チェイシング・イエスタデイ』

もともとソングライターとしてとんでもない才能を持っているノエルが、
まあ実に見事なバランス感でもってその才能をオアシスとは違う形で開花させている。
オアシスのバンド・サウンドとはまた違う形での新たなロック・サウンド。
オアシスのアンセミックな楽曲とはまた違う形でのロックの名曲感。
バック・トゥ・ルーツであるようでアップデートでもある絶妙なアレンジの技。
などなど、などなど、
唸らされるところはいくらでも挙げられるが、うーん、やっぱり曲がどれも本当にいい。
なんというか、しっかりといい。
本当に力のあるソングライターにしか書けないし、すぐにしっくりと馴染む即効性があるのに聴けば聴くほど苦味やコクが出てくるこの味わい深さはそのへんの若手にはとてもじゃないが書けない。
デビュー作だった前作のよさを踏まえても、「いやノエルってやっぱり凄いね!」という感想をあらためて持たざるをえない。
傑作だ。

前作との違いを簡単に言ってしまうなら、エレキギターのサウンドが全面に戻ってきたことによって「ロック・アルバム」としてのまとまり、一貫性が生まれたこと。
というか2枚目にしていきなりロックの定番アルバムとなり得る作品ができてしまっている。


アルバムに限らず、ここへきてノエルという存在が急激に確立(と言うとちょっと変かな)してきた感がある。

オアシスが解散して、ノエルがソロでアルバムを出した頃は、リアムのビーディ・アイとの比較において、「やっぱりノエル、いいね!」という感じだった。
だがどこかでオアシスの不在というか、オアシスへの未練を通してノエルを見て聴いてしまっていたように思う。

だがその後のツアーや言動を通して、ノエルは一人のアーティストとして、
オアシスの幻影を超えて、イギリスのロック・シーンを代表する存在になっていくのではないかと思わせる空気を作ってきた。
兄貴分であるポール・ウェラーの座にはもはやとっくにノエルが座り、
ノエルの発言力はある意味オアシスの時代よりも大きなものになっていると言える。
リアムのビーディ・アイが挫折したことがそれに拍車をかけたのは皮肉ではあるが。

このアルバムのあまりにも堂々とした出来、絶妙なバランス感は、
ノエル・ギャラガーがオアシス時代から再びUKロック・シーンの王座につくことを予感させる。
この人凄いわ、やっぱり。
(山崎洋一郎)
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