今週の一枚 スティング&シャギー『44/876』

今週の一枚 スティング&シャギー『44/876』

スティング&シャギー
『44/876』
4月20日発売


本格的なロック・アルバムとしては実に13年ぶりとなった『ニューヨーク9番街57丁目』を2016年にリリースしたスティング。アルバムの内容は強靭な現役感を驚異的なテンションでもって伝えるパフォーマンスとなり、ツアーや来日公演でも、その健在ぶりと充実ぶりをあますところなく披露するものになっていた。そして今年に入って突如アナウンスされ、今回リリースされたのがシャギーとのデュオ名義としての新作『44/876』だ。

タイトルは、スティングの母国イギリスとシャギーの母国ジャマイカの国番号を組み合わせたもので、つまりはふたりのコラボレーションによるレゲエ・アルバムだ。前作とそのツアーで現役ロック・ミュージシャンとしての健在ぶりを見せつけたスティングだが、なぜ今レゲエなのか。

考えてみれば、前作『ニューヨーク9番街57丁目』がザ・ポリス時代も含めたスティングの全キャリアを思わせる内容のサウンドと楽曲で構成されていたものの、ここで不在だったのは特にポリス時代に強く打ち出していたレゲエからの影響だった。

したがって、『ニューヨーク9番街57丁目』のような作品を形にした後、レゲエに取りかかるというのはスティングにとってある意味でごく自然な成り行きともいえる。また、そういうことならどうしてもレゲエというジャンルへのオマージュという性格も作品として強くなるので、シャギーという本業のアーティストをパートナーとして選んだのも大正解といえるのだ。

内容的には、全編レゲエ・フレイヴァーに貫かれた、まさにレゲエへのオマージュ・アルバムとなっており、どこまでもリズミカルで弾んだ音でありながら、どこか陰影も効かせた作りになっているところがとてもスティングらしい作品になっている。実際、スティングとシャギーがそれぞれ自身の経験を反映させた歌詞を歌っていて、そういう苦さがこのレゲエ・プロジェクトをなおいっそうリアルなものとして感じさせるのだ。

オープナーとなる“44/876”はアルバムで最もポップなダンスホール的な作りであり、ふたりのコラボレーションをぶち上げるトラック。あまりにもスティング的な節回しと、シャギーのぶちかましトーストのコントラストとそのダイナミズムが映えまくるトラックで、このアルバムの聴きどころをよく抽出した音になっている。

楽曲的にはスティング的なボーカルとメロディラインが際立っているものと、シャギーの節回しを活かしたトラックなどふたりのボーカルの特徴と楽曲の特質によるバリエーションが各種揃っている。実に粒の揃った曲が収録され、コラボレーションとしてはかなりの成果だとしかいいようがない。

そもそものコラボレーションのきっかけとなった“Don’t Make Me Wait”は、古典的なレゲエとして制作された素晴らしいトラックで、おそらく今後のスティングのライブでもセット入りすることは間違いない。この系統の曲は“Morning Is Coming”、“Just One Lifetime”、“To Love And Be Loved”などがあり、いずれもふたりのボーカル・パフォーマンスをよく活かした曲として仕上がっている。

その一方で“Dreaming In The U.S.A.”などは実にスティング的な曲でありながら、レゲエだからこそアメリカ体験をここまで客観視できたという、このコラボレーションでしか成立しえない必然性をよく体現している。また、“22nd Street”などはスティングの手癖のようなジャズ・フュージョン的な流れにジャマイカ・サウンドを投入することで、見事にスティングの叙情を引き締めており、このプロジェクトのダイナミズムを如実にわからせてくれる。

おそらく1回こっきりのコラボレーションということになるのだろうが、これだけ聴きどころの多い曲が揃ったとなったら、これは大成功だったとしかいいようがないだろう。(高見展)
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