今週の一枚 ショーン・メンデス 『イルミネイト』

今週の一枚 ショーン・メンデス 『イルミネイト』

ショーン・メンデス
『イルミネイト』
3月8日(水)発売

現在発売中のロッキング・オン最新号で表紙を飾ったエド・シーランは、その巻頭インタビューの中で変質し、多様化したポップ・ミュージックの現在について、また、なぜそのポップの最新形に「ギター・ミュージック」として挑むのかについて語っている。そんな、エド・シーランの示すポップ・ミュージックとギター・ミュージックがイコールで繋がれた、ポップの新スタンダードの継承者と言えそうなのが、たとえばこのショーン・メンデスだ。1998年生まれのショーン・メンデスは現在18歳。デビュー・シングル“Life Of The Party”リリース時にはまだ15歳(!)で、全米トップ25入りの史上最年少記録を打ち立てたという正真正銘の新世代だ。そんなメンデスが昨年海外リリースされ、全米初登場1位を記録したセカンド・アルバム『イルミネイト』の日本盤と共に、ついに日本デビューを飾る。

ギター1本の弾き語りで剥き出しにされる、メロディの美しさや歌の上手さという極めてシンプルな強みを自身の歌の原点としているのは、このセカンドでも不変だ。そしてエド・シーランの歌が“Photograph”のような極限まで削ぎ落とされたアコ―スティックの骨格から、ソリッドでモダンな“Shape Of You”や、とことん饒舌でエモーショナルな“Castle On The Hill”のようなポップ・ソングが生み出されていくように、本作におけるメンデスもまた、驚くほど自由自在に音を膨らませている。R&Bやゴスペル、ヒップホップ調のナンバーが増加したのは非常に今っぽいし、そんな曲調のバラエティ増に伴い、彼のボーカルも前作から飛躍的にレンジを広げている。ジョン・メイヤーと比較されるのも納得の、若さに似合わぬ掠れ気味でセクシーな歌唱から、逆に年相応の甘く軽やかに弾む歌唱、そしてさらにはアウスゲイルあたりをも彷彿させる深い余韻を残すファルセットまで、18歳となり声質が落ち着いたこともあるだろうが、曲に合わせて声をデザインしていく、そんなレベルに本作では入っている。

モデルも兼業するほどのルックスの良さもあり、目下のところ全米のギャルのハートを鷲掴みにするアイドルとしてもトップクラスの人気を誇るショーン・メンデスだが、ジャスティン・ビーバーやテイラー・スウィフトによってアイドルとアーティストを分ける壁がぶち壊された今となっては、そのアイドル人気はより広く歌を伝える武器のひとつとしてポジティブに捉えるべきだろう。もちろんそれは実力あってのものだし、メンデスはそのアイドル人気も含め、本格的な歌を伝播していく力、聴く者を選ばない間口の広さで突出した存在だ。もともと彼はユーチューブはもちろんのこと、Vineにアップした有名曲のカバー映像で瞬く間に注目を集めた少年。わずか6秒の勝負となるVineで鍛えられた瞬発力、カットアップするセンスが、ポップに「ならざるをえない」メンデスの歌を支えているのかもしれない。本作からのシングル“Treat You Better”や、激ソウルフルな“Mercy”といったナンバーの、曲中のどのタイミングから聴き始めても常にキャッチーである構造に驚くたびに、つくづくその特殊性を思い出さずにはいられない。

今月末の「POPSPRING 2017」で初来日を果たすショーン・メンデス。NYマジソン・スクエア・ガーデンでのライブ音源がボートラ収録された日本盤でライブの予習をぜひ。(粉川しの)
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