ロンドンのインディシーンの盛り上がりはまだまだ続いている。そのことを証明するのが、男女混合の6人組バンド、マン/ウーマン/チェーンソーの登場だ。
これまでにリリースしたシングルやEPを聴くだけでも、ノイズやシューゲイザーを取り入れたヘヴィなサウンド、フォーク調のもの、ポストパンク的なアプローチなど、多岐にわたるアンサンブルをすでに獲得しており、とにかく測り知れないポテンシャルを秘めていることがわかる。バイオリンの活かし方などはブラック・カントリー・ニュー・ロード以降といった感じもするが、マン/ウーマン/チェーンソーはやたら若々しいエネルギーが迸っているのが魅力。未知数だからこその面白さがあるのだ。
ということで、さっそく彼らにインタビューをおこなった。キラーチューンとなった新シングル“Only Girl”とともに、今、この瞬間の彼らを味わってほしい。
(インタビュアー:木津毅 rockin'on 2月号掲載)
●10代から音楽制作をはじめ、パンデミックを経て現在の編成になったそうですが、経緯を簡単に教えていただけますか。
ビリー・ワード(Vo/G)「自分とベラは14歳のときにはじめて会って、そこからずっといっしょにベッドルームで音楽を作ってて……ちょうどパンデミックが明けてライブができるようになったタイミングで、ふたりでライブ活動を始めたところから、じょじょに今のラインナップが固まって、そこからバンドが飛躍的に生まれ変わった。使える楽器やアレンジの幅が大幅に広がって、今のこの特異なラインアップに合わせて曲を書けるようになったんだ」
●音楽の趣味が似てたから仲良くなったのでしょうか。
ベラ・レッパネン(Vo/B)「いや、そこに関しては一切被ってないはず」
ビリー「しいて言うなら、ニルヴァーナくらい?」
ベラ「それはあるね。というか、普通に友だち同士だったんだよね」
ビリー「友だちになってからいっしょに音楽をやっていなかった時期なんてあったっけ?ってくらい、気がついたらふたりで演奏してた」
クリオ・ハーウッド(Vn)「私は雇われバイオリンとしてあとから入ったんだけど、今では仕事と友情が逆転して、完全に友情で結ばれてる。友だちの紹介でマン/ウーマン/チェーンソーってバンドがバイオリン奏者を探してるって聞いて、最初は『何そのふざけたバンド名』ってリアクションで(笑)。でもやってみたら楽しくて引きずりこまれた(笑)」
●そのバンド名はどのように出てきたものですか?
ビリー「メンバーの何人かは映画同好会の仲間で、部室の本棚に『Men, Women, and Chain Saws』ってタイトルの本が置いてあって、『これ、バンド名にしたらウケるかも』って思ってつけたのが、そのまま定着した(笑)。正直、ここまで長く続くとは思ってなかったんで(笑)」
●メンバーの音楽のテイストはバラバラだそうですが、共通して好きなミュージシャンを挙げるとすると?
ベラ「いや、毎回その質問されるたびに答えに詰まる(笑)……マジ思い浮かばないんだけど、どうよ?」
ビリー「ブラック・ミディとか?」
ベラ「たしかにね!」
クリオ「あとテキサス行ったとき、みんなでレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンにどハマりしてたよね」
●ロンドンのインディシーンから影響を受けたところはありますか?
ベラ「あのへん、まさに自分たちが10代の初期の頃に最初にハマったド真んなかの音楽だったりするからね。ウィンドミルのステージに最初に立ったときの達成感は忘れらんないし! ただ、自分たちが音楽を始めた時期とは少しズレてるというか、サウス・ロンドンのシーンに出入りするには年齢が若すぎたよね?」
ビリー「シーンとか関係なく、普通に自分たちでライブ始めてた感じ」
ベラ「まあ、自分とそんなに歳が変わらない年代の人たちがステージに立って自分の表現をしてる姿を観て触発されたのはたしかだよ」
ビリー「というか、ロンドンっていつの時代でもつねに何かしら面白いシーンが起きてる感じ。これに関しては昔からロンドンの特権みたいなものだから」
●これまでの作品を聴いていると、多様な可能性に開かれたバンドだという印象があります。サウンドの多様性については意識的ですか?
クリオ「最初の頃は、6つの楽器をただ重ねただけみたいな感じだったんじゃないかなあ……そこに何かしらの意図を持たせるようになったとき、自分たちの演奏が思いのほか相性が良くてハマってることに気づいたんだと思う。そこから、あの激しいノイズのなかにもちゃんと意味や方向性を持たせる方法を発見していったというか……そうしないと、ただ圧倒されるだけになっちゃうから。最終的には、音を通した旅みたいなリスニング空間が開けてるんじゃないかな」
ベラ「必ずしも計画してやったわけじゃないと思う。むしろ、私たち全員がそれぞれ趣味も育った環境も性格も全然違っていて、その結果、この音にたどり着いたみたいな感じじゃないかなあ……大所帯ゆえに」
●アンサンブルはどのように作りあげていくのでしょうか。
ビリー「何しろ人数が多いんで。この1年新曲作りをしていくなかで、全員が同時に演奏する場合にどうやって個々のパートが合うようにするか、足し算と引き算のバランスとかいろいろ研究してて。それから、曲が持っているストーリーを音のテクスチャーの変化を通して伝えていくってことを意識し始めたら、めちゃくちゃ楽しくなってハマっちゃって。 “Ode To Clio” とか、その実験のかなり初期の段階にできた曲だね」
●歌詞についてもバラエティがありますよね。テーマやモチーフはどのように着想を得ますか?
ベラ「 “Ode To Clio”に関しては、最初何も考えずに適当に、ただ音の響きだけで書き始めたっていうのは覚えている。あまりスマートな書き方じゃないかもしれないけどね(笑)。ただ、そのあと自分の書いたものを見返したときに、『なるほど、これってあのときのことについて書いていたんだ』って気づいたりして、そういうことがけっこうある。前にもドラムのローラ(・チェリー)と新曲について話していたとき、ローラが『あの歌詞ってあのことについて書いてるよね、めっちゃいいね!』ってコメントくれたのに対して『え、何のこと?』的な反応で。そこからローラが歌詞の分析を語ってくれたんだけど、まさにドンピシャで、『え、本人よりも先に気づく?』みたいな、すごく不思議な感覚だった。歌詞を書き始めた頃は、レナード・コーエンの詞とか読んで、何て言うか“賢そう”っていう言葉が正しいのかわからないけど、知的でディープな表現を目指してた。でも、実際のところ、たんに日記を書いてるみたいなもんだよね。どこから歌詞が浮かんでくるのか自分でも答えられないし、何も考えずに書いていてあとになって人から解釈を聞いて『なるほど、そういうことか』って理解できることもあるくらい」
●シングル“Only Girl”はきっと自信を持って打ち出した曲だと思うのですが、この曲のどういうところが気に入っていますか?
クリオ「とりあえず、めっちゃ誇りに思ってることはたしかで! 今年の夏のはじめにみんなで集まって曲作りしたんだけど、そのセッション中に一番スムーズにできたのがこの曲で……ギター/ベース/ドラム部隊がシューゲイザーっぽい激しい音を鳴らしてたところに、自分がバイオリンで加わって……あえて明るくてハッピーなメロディを合わせたっていう、その対比がすごく気に入ってる。結果、見事にハマった例じゃないかなあ。ボーカルが入ってくる瞬間も超好き。とりあえず、これまで出したシングルのなかで確実にお気に入りの一曲であることはたしかだよ。めちゃくちゃロマンティックだしさ。恋愛中の人には絶対に刺さるはず! キラーチューンっぽいノリもあってそれもすごい好き」
ベラ「私的には、ハッピーな曲が書けたのが嬉しかったかな。放っておくとエモ方向に走りがちだから(笑)。たぶん、これまでの自分たちの曲のなかで一番歓喜に溢れてる曲なんじゃないかなあ。ライブでも、まだ発売前からけっこうな人数がこの曲を目当てに来てるんだっていうワクワク感が伝わってきたし」
ビリー「何週間か前にリリースされて、そこからライブでやったときの盛り上がりが半端なかったよね! もう部屋中全員がガンガンに飛び跳ねるみたいな盛り上がりぶり!」
●アルバムは2026年だそうですが、どのような作品になるか、話せる範囲で教えてください。
クリオ「とりあえず傑作になるよ(笑)。みずみずしい、若々しい、青春って感じ」
ビリー「けっこう曲にバラエティがあるから、みんなそれぞれお気に入りの曲を見つけてくれるといいよね。あっちゃこっちゃ飛躍していくけど、全体として筋の通ってる作品を目指してはいるつもりだよ」
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