今週の一枚 ゼッド 『ステイ+』

今週の一枚 ゼッド 『ステイ+』

ゼッド
『ステイ+』
12月27日 CD先行発売(デジタル配信:12/29開始予定)


「ECHO TOUR 2018」の一環として、来る3月に幕張・神戸での来日公演を控えたゼッドが、この年の瀬に日本独自の編集盤を届けてくれた。アレッシア・カーラを迎え世界各地のチャートを賑わせたシングル“Stay”をはじめ、アルバム未収のトラックに纏めて触れることが出来る内容だ。アップリフティングなエレクトロハウスから距離を置き、サウンド面でより豊かな色彩を感じさせた『トゥルー・カラーズ』。その新局面をさらに押し広げる格好となった近作曲をチェックしておくことは、今のゼッドのショウに触れる上で重要だろう。

Zedd, Alessia Cara - Stay (Live On The American Music Awards - 2017)

アレッシア・カーラの歌声がフックとして浮かび上がるデザインの“Stay”は、「EDC JAPAN 2017」でプレイされたときもザ・チェインスモーカーズの楽曲と繋げてプレイされており、エレクトロニックミュージックのプロデューサーとして新しいポップソングの感情表現を追求しようとする今のゼッドの姿勢がはっきりと見えていた。1Dのリアム・ペインを迎えたシングル曲“Get Low”は、瑞々しく官能的な響きのガラージ・チューンとなっており、これも扇動的なシンセリフで人々を踊らせてきたかつてのゼッドとは一線を画している。

Zedd, Aloe Blacc - Candyman

フューチャーベースで現代のフィリー・ソウルを構築してみせたような、アロー・ブラックとの2016年作“Candyman”も素晴らしい。M&M’Sの75周年キャンペーンに起用された楽曲だ。アヴィーチー“Wake Me Up”で一躍名を上げたアロー・ブラックだったが、もともとはストーンズ・スロウに籍を置きつつ強くオーセンティシティを感じさせていた変わり種のソウルシンガーであり、ゼッドはこの“Candyman”で彼の本来の資質を巧みに導き出している。

『トゥルー・カラーズ』のリード曲だった“Beautiful Now feat. Jon Bellion”が収録されているのは、ライブでの盛り上がりを期待してのことだろう。多くのDJたちも挙ってプレイし、シンガロングを誘発してきたナンバーだ。また、アリアナ・グランデに提供した“Break Free feat. Zedd”や、ヘイリー・スタインフェルドとグレイのコラボ曲として制作されたアコースティック色の強い“Starving feat. Zedd”といったヒット曲、さらにはDJスネイクの“Let Me Love You feat. Justin Bieber (Zedd Remix)”までが押さえてある。

ピアノのフレーズからドラマティックに始まる16分強の“Zedd Mega Nonstop Mix”(前掲のライブ映像からも分かるように、ゼッドは幼少期からクラシックピアノを学んでいた)は、タイトルどおり今作の収録曲や『トゥルー・カラーズ』収録曲を凝縮ミックスした音源だ。トラックメイキングにDJワークにと、培われた知識・技術をフル稼働させて自身のキャリアを刷新しようとするゼッドは、つまり優れたポップソング作家であり熱狂的なDJショウの請負人でもあるという、とても欲張りな充実期を迎えている。その事実がよく分かる編集盤だ。(小池宏和)
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