ゼッドの最新アルバムでもフィーチャーされていた、オーストラリア在住のトロイ・シヴァンによるデビュー・アルバム。エレクトロニックかつ内省的な楽曲を歌うシンガー・ソングライターで、本作は既に全米7位のヒットとなっている。デラックス・エディションには先行してリリースされたEP『ワイルド』の6曲がそのまま収録され、“ワイルド”と“フールズ”、そしてアルバム・リリースと共に公開された“トーク・ミー・ダウン”という3曲によって3部作のドラマ仕立てMVが制作された。ストーリーは幼馴染同士の少年AとBの日々を追う内容(Aはトロイ自身)であり、AはBに恋心を抱くようになるのだけれど、Bの父親は酒と暴力の問題を抱えており、《僕はあなたの側で眠りたいだけなんだけどな》と歌われる“トーク・ミー・ダウン”で、結果的にBの父親は亡くなっている。Bの傍にはガールフレンドが寄り添っており、墓地のシーンで歌われるAにとってのこの歌は引き裂かれた恋の歌だが、同時にBにとっては永遠に失われた父親への愛に彷徨う歌でもある。トロイ・シヴァンの普遍的なポップ・センスを巧みに伝えるヴィデオになっているわけだ。(小池宏和)