今週の1枚 プリンス『アート・オフィシャル・エイジ』

今週の1枚 プリンス『アート・オフィシャル・エイジ』

プリンス
『アート・オフィシャル・エイジ』
発売中


2枚同時発売されたプリンスの新作。

『アート・オフィシャル・エイジ』の1枚はジョシュア・ウェルトンと共にプリンス本人が作曲・プロデュース・アレンジ・演奏のすべてを行ったもの。
つまり初期のパターンである。

一曲目がいきなりダフト・パンクの”ゲット・ラッキー”と”ギヴ・バック・トゥ・ザ・ミュージック”と”ジョルジオ・バイ・モロダー”を混ぜたような曲なのはちょっと笑ったが、
プロデューサー、サウンド・クリエイターとしてのプリンスが久々に全開になって戻ってきてくれたのはなにより嬉しい。
その先鋭性はといえば、そりゃあ2014年の今の、テクノロジーの進化を完全に肉体化したR&B/ヒップホップ/ポップのプロダクションを凌駕しているとは言えない。
プリンス自身もそんなつもりはないのだろう。
むしろ、かつて自分が作り上げた当時の先鋭的サウンドをしっかりと再提示した、という方が近いのではないか。
僕たちファンが長年望んでいたこともまずはそれだし、
そういう意味では非常に的確な狙い所だと思う。
まあ、何度か聴いているとそんなことすらだんだん気にならなくなって、ほんとうに久々にアルバム1枚「プリンス・サウンド」の中に没頭できる快感に満たされる。
そもそも、一人のクリエイターがスタジオにこもってファンク・ミュージックを作る、というスタイルはスティーヴィー・ワンダーにつぐオリジネイターだし、
そのクリエイターがステージに上がると驚異的なシンガー、ギタリスト、ステージ・パフォーマーでもあるというような奇跡は2014年のいまだ他に誰も成し得ていないし、
ジェームス・ブラウンとスライ&ファミリーストーンとジミ・ヘンドリックスとマイケル・ジャクソンとヒップホップを、すべて一つの才能と肉体で繋いでしまう存在はポップ・ミュージック史上ほかに誰もいないし、
そのプリンスが、古巣のワーナーに戻って健全な状況の中で自らの才能にトータルに向き合った作品を作ったというだけで素晴らしくないわけがない。
ぱっと聴きでは風変わりな感触を随所で感じさせるところも含めて、
あの偉大なプリンスの久々の傑作である手応えは十分にある。
山崎洋一郎の「総編集長日記」の最新記事
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