今週の一枚 サーカ・ウェーヴス

今週の一枚 サーカ・ウェーヴス

サーカ・ウェーヴス
『サーカ・ウェーヴス EP』


結成わずか半年で発表したシングルで人気に火がつき、
今年、メジャーからアルバム・デビューが決まった、話題の新鋭ロック・バンド。
サマソニにも出演が決定!

といわけで話題のサーカ・ウェーヴスのこれまでのシングルと配信リリースされた5曲を集めたデビューEPが
今週の1枚。

リバティーンズ、ストロークス、アークティック・モンキーズのDNAを完全に受け継いだバンドだ。
ただ、このバンドを聴いていると、リバティーンズって暗かったんだなあ、
ストロークスって大人っぽかったんだなあ、アークティックってダークだったんだなあ、と思う。
それぐらい基本トーンが違う。
とにかく演奏も歌もキラキラしていて瑞々しい。
若いロックンロールとはこれ! ロックンロールの若さとはこれ! という音。
しかも「僕は若すぎてもう時間がない」なんて歌詞が乗るのだから僕ですらキュンキュンである。
「僕は年老いてもう時間がない」でもなく、「僕は若すぎて時間がありすぎる」でもなくて
「僕は若すぎてもう時間がない」。
言ってることは間違っているのだが、間違ったことを思いっきり歌うのがロックンロールの若さである。
そして、それは間違っていないことが証明されるのだ。

それはいいとして、この吹っ切れたような清々しさ、瑞々しさは、
今のUKロック・バンドにとっての突破口なのかもしれないとちょっと思った。
今、特にUKにおいては、シリアスさや憂鬱、悲しみ、倦怠、苦味―――といった感覚を体現しているのは
エレクトロ・ポップやポスト・ダブステップ勢で、ほとんどロックの出る幕はない。
実際、リバティーンズやアークティックのDNAを持ったバンドがここ数年間でいくつも出てきたが、どれもぱっとしない。
UKロックとしての翳りの美学を引きずっていたからだ。
でも、中途半端だと今やジェイムス・ブレイクには勝てない。

だとすると、このサーカ・ウェーヴスのような甘酸っぱい青春性と楽天性に特化したロックンロールが、
シーンに切り込める唯一の方法なのかも、とちょっと思ったのだ。

そんなことを考えてバンドをやっているわけではないのは確かだが、
今のシーンにおいてリスナーはロックンロールに何を求めているかがわかっているバンドではあると思う。
山崎洋一郎の「総編集長日記」の最新記事
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