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    今週の一枚 UVERworld

    今週の一枚 UVERworld

    UVERworld
    『Ø CHOIR』



    今週の1枚ではなくて、今年の1枚。

    と言い切ってしまいたくなる自分がいるが、
    まだ7月なのでそれはさすがにだめでしょうと制する編集長としての自分に止められた。
    それほどのアルバムである。

    まず、このアルバム、普通じゃない。
    「アルバム」の意味が通常の規格を超えている。

    例えばこのアルバムには“ナノ・セカンド”、“Fight For Liberty”、“a LOVELY TONE”、“7日目の決意”、“別世界”、“Wizard CLUB”という6曲のシングル曲が入っているが、
    それ以外の曲がシングル曲と全く変わらない存在感とテンションである。
    「“IMPACT”、“誰が言った”、“Ø choir”、“ENOUGH-1”、“KICKが自由”、“在るべき形”が、なんでシングルにならなかったのかさっぱりわからないぞこの野郎」とイラッとするぐらいの、一曲ごとの異常な濃さとテンション。
    シングル曲とそれ以外の区別感が全く無い。

    もっと言えば、このアルバムには「曲」という概念がない。
    それぞれの曲の狙いと完成度と独自性ははんぱないにもかかわらず、
    一曲ずつ曲が進んでいく感じが全くしない。
    得体の知れない巨大なエネルギーがアルバム『Ø CHOIR』というモンスターになって、
    聴き手をその背中に乗っけて飛び回るような62分間の体験があるだけだ。
    こういうアルバムは日本のロック史においてもそうはない。


    このアルバムでメンバーが、TAKUYA∞が伝えたいメッセージは
    僕がここで要約したり説明したりできるほど簡単なことではない。
    それでも敢えて、敢えて言うなら、「生きろ」ということだと思う。
    うん、間違っていないはずだ。
    すべての言葉、音−−−−いや言葉の隙間、音と音の間隔ですら、全てが
    「生きろ」と叫んでいる。
    これほどのはっきりとした強いメッセージを放つロック・アルバムは、
    最近では数少ない。
    ブルーハーツのデビュー・アルバム、ドラゴン・アッシュの『Buzz Songs』を聴いた時の感触に近い。
    アルバム1枚全てが、どこを聴いてもすべての音が「生きろ」と鳴っているのだ。


    メッセージを込めたロックのアルバムなんて腐るほどある。
    だが、そのほとんどがどうでもいいようなシロモノである。
    なぜか。
    それは聴いた瞬間に「お前に言われたくない」と感じるからだ。
    「そのメッセージを歌ってるお前はどれほどの者なんだ?」
    「お前にその言葉を歌う資格があるのか?」
    そう感じさせてしまう歌がほとんどだからだ。
    いくら上手に歌詞を作っても、感動的なメロディーを作っても、それっぽいMVを作っても、
    それを歌い演奏している人間の、人間としての説得力がなければそれはメッセージとして届かない。
    それがロックの最大の特性である。
    人間が鳴るのである。

    このアルバムが「今週の1枚」どころか「今年の1枚」であり、
    ロック史に残る名盤だと僕が確信する最大の理由はそこにある。
    このアルバムは音楽に対する高い志を持ち、強い絆で繋がった6人の人間そのものが鳴っている。
    その6人が持っている能力すべてを込めて「生きろ」と叫んでいる。
    それがアルバム全体で表現されている。
    こういうアルバムは、そうはない。
    山崎洋一郎の「総編集長日記」の最新記事
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