ONE OK ROCKがONE OK ROCKを乗り越えて「その先」の世界=最新アルバム『Eye of the Storm』へ進んでいくための、どこまでも熾烈で美しいドキュメントである。
昨年春にトータル30万人を動員した4大ドームツアーから東京ドーム公演の模様を収めた『ONE OK ROCK 2018 AMBITIONS JAPAN DOME TOUR』。“Deeper Deeper”、“I was King”で怒濤のシンガロングを呼び起こし、ドームの大空間を高純度の歓喜で満たした中でしかし、Taka(Vo)は「みなさんたちが思ってるよりも、ONE OK ROCKってこの先すごく険しい道程が待ってるんじゃないかって」と胸の内を露わに語り、「ONE OK ROCKというバンドは、もうそろそろ『第1章』にピリオドを打って、『第2章』の幕開けを迎えてもいい時期なんじゃないかなって」とさらなる決意を明かしていた。
それから半年後の昨年10月。53人のオーケストラとともに行ったスペシャルライブの最終日=大阪城ホール公演を映像作品化した『ONE OK ROCK with Orchestra Japan Tour 2018』。自分たちの楽曲をオーケストラアレンジというプロセスを通して解体・再構築し、その進化の過程を壮麗に鳴り渡らせる中で、“欲望に満ちた青年団”や“カゲロウ”といった初期の楽曲(筆者が観たさいたまスーパーアリーナ公演では「初期の曲はがっつり歌謡曲」とTakaが語っていた)と、“Change”や“One Way Ticket”といった最近の楽曲群との構造的な相違を浮き彫りにしてみせた、まさに「音楽的冒険」と呼ぶべき一大トライアルだった。
この2作品に刻まれているのは、『Eye of the Storm』という革新アルバムを生み出すに至った序章であると同時に、すでに手にした成功に安住することなく常に新たな闘いを求めるONE OK ROCKの真摯なアティテュードそのものだ。正真正銘「世界を揺さぶるロック」を鳴らすために、ソングライティングの手法もサウンドの構造も劇的に刷新する――傍から見ればあまりにもシビアに思える試練はしかし、未知の領域を追い求めることをアイデンティティとするONE OK ROCKにとっては実に必然的な変革だった、ということだ。
「ロックバンドっていうのはさ、挑戦するのか止めるのかの二択しかないわけ」……ドームツアーの映像でそう語るTakaの視線は、大舞台の高揚感よりも、『Eye of the Storm』とその果てに広がる未踏の地平への挑戦精神と畏怖に満ちているように見える。いよいよ9月22日(日)からスタートする全国ツアー「ONE OK ROCK 2019 - 2020“Eye of the Storm”JAPAN TOUR」の前に、今こそ改めて心に焼き付けておいてほしい。そんな映像作品だ。(高橋智樹)
8月21日に同時発売されたふたつのライブ映像作品=『ONE OK ROCK 2018 AMBITIONS JAPAN DOME TOUR』&『ONE OK ROCK with Orchestra Japan Tour 2018』。ここにあるのは、【今週の一枚】ONE OK ROCKがライブを通じて最新アルバムで大変革を起こしたことが刻まれた2つの映像作品について
2019.08.21 12:30