今週の一枚 マムフォード・アンド・サンズ 『ワイルダー・マインド』

今週の一枚 マムフォード・アンド・サンズ 『ワイルダー・マインド』

マムフォード・アンド・サンズ
『ワイルダー・マインド』
5月6日発売


聴いて真っ先に思い出されるのがコールドプレイだった。サウンドではない。アリーナ・バンドであることを大前提とした、広い空間の隅々にまで音が行き渡るように設計されたプロダクションそのものと、何よりも、もはや「こういうアルバムを作りたかった」という理想を超えて、これしか出来ないというものを作ったら、とんでもない作品が出来上がってしまったという突き抜け感。

2000年代に、UK叙情派なるタームが溢れ返るなかで、真っ先にコールドプレイがド天然なマイペースぶりで大ブレイク街道をひた走っていったように、マムフォードもまた、2010年代のはじめ、オルタナティヴだろうがメインストリームだろうが、とにかくフォーキーなサウンドが溢れかえっていたあの頃を遥か彼方に捨て去っている。

「マムフォードがエレクトリックに転向した」、「バンジョーが鳴っていない」と、これまでと大きく異なる方向性に周囲が騒ぎ立てた3枚目だが、不思議なことに、ここには変な驚きはないのだ。ああ、アコースティックという方法論はあくまでも装飾に過ぎず、それを最大限にまで押し広げ、ライヴの場で磨き上げていった結果が、前作『バベル』とそのツアーだったのだ、と。

もはやアリーナ・バンドであることがデフォルドであるバンドの、当たり前のような進化作である。
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