コールドプレイ
『ゴースト・ストーリーズ ライヴ2014』
360°の特設円形ステージを取り囲む数百人の観客。
1曲目”Always In My Head”でクリス・マーティンは空中に浮かんで歌う。
ロープもないのに空中を泳ぎながら歌う。
そして6曲目”Another's Arms”を歌い終えるとクリスは会場を出てタクシーをつかまえる。
向かうのは海辺の桟橋で、そこで”Oceans”をアコースティック・ギターで弾き語る。
歌い終えるとギターを置いて桟橋から海へとジャンプする。
飛び込んだ海の中は元いた特設円形ステージで、
そこで”A Sky Full Of Stars"を会場の観客とともに踊りながら歌う。
紛れもないライブDVDでありながら、これはアルバム『ゴースト・ストーリーズ』のもう一つの形だ。
アルバム『ゴースト・ストーリーズ』で、コールドプレイは全く新しい表現方法を獲得した。
ミニマルな演奏、エレクトロニックとの融合、アンビエントな音空間。
だが最も大きな変化は、コールドプレイの表現が初めて具体的なイメージを持った、ということだ。
『X&Y』、『マイロ・ザイロト』といったアルバム・タイトルに象徴されるように、
コールドプレイの歌はどこか抽象的で観念的なイメージの世界だった。
だが今作は、“MAGIC”、“ANOTHER’S ARMS”、”TRUE LOVE”、”MIDNIGHT”、”OCEANS”、そして”A SKY FULL OF STARS”といったとても具体的ではっきりとした曲名に表れているとおり、すぐに光景が浮かんで実感できるような世界に変わった。
音がミニマルでアンビエントで抽象的になったのとは逆に、表現としての肉体性ははるかに増したのだ。
だからクリスは空中を泳いで歌い、桟橋へ行って歌い、海へ飛び込んで、戻ってきて観客とEDMで歓喜の踊りを踊るのだ。
ダブステップ以降のミニマルでアンビエントな音空間、新しいR&Bのビート感が生み出すメランコリー、そしてEDMの歓喜―――
そうした新しいサウンド・デザインをコールドプレイは見事に自分の新たな肉体として獲得している。
この映像はそれをアルバム以上に明確にコンセプチュアルに表現している。
今ロック・シーンの前線で起きていることを学ぶためにもこれは観ておいたほうがいいと思う。