今週の一枚 デス・グリップス
2014.07.07 07:00
デス・グリップス
『NIGGAS ON THE MOON』
この原稿を書き始めた矢先に「デス・グリップス解散!」のニュース。
やってくれるなあ。
突然ツアーをキャンセルしたり、所属レーベルと揉めて新作をネット上にリークしたり、
自分のちんこにアルバム・タイトルを書いてアートワークにしたり、あげくの果てに契約を切られたり――
といったこれまでの彼らのスキゾな活動ぶりからすれば解散すら驚くに値しないのかもしれないが、やはり残念だ。
この新作も全曲無料ダウンロード可で、本作と連作になっていると言われる次作『Jenny Death』もおそらくフリーでリリースされそう。
ビョークの声が全曲でサンプリング使用されている、というのがこのアルバムのトピックで、
実際、全編にビョークの声が使われている。
だが基本的には、ネット世代のノイズ/ヒップホップ/パンクで押し切っていて、路線は変わらない。
このカオティックなビートとノイズの中にあって、それ以上の凶暴性を放つビョークの声の原始的な力はすごい。
デス・グリップスの活動や音楽性は「生き急いでいる」と言い表されることが多いが、僕はそう感じたことはない。
むしろ、ライヴを観ても、音源を聴いていても、デス・グリップスの変幻自在なビートとノイズは、
どれだけ時間を微分し、時間の無限性を掘り起こし、時間のスピードを無効化することができるかという挑戦に思える。
逆に「ルール」に則った活動や音楽の方がむしろ時間を殺し生き急いでいるのだ。
「俺達は今が最高の状態だ。だから終わる」
という解散声明は、そうした姿勢を象徴していると思う。
ノイズやビートの実験によって時間の本質を暴く、というのはオルタナティヴなシーンにおいては普遍的なテーマだが、
デス・グリップスはそれを肉体化している。