今週の1枚 追加編その② プリンス&サードアイガール『プレクトラムエレクトラム』

今週の1枚 追加編その② プリンス&サードアイガール『プレクトラムエレクトラム』

そしてもう1枚、こちらは最近プリンスのバックを務めている女子バンド「サードアイガール」との共演をライヴ録音した『プレクトラムエレクトラム』。

ファンクというよりも、ファンクロック。

プリンスから多大な影響を受けたケイリブはインタビューでこう言っている。
「ディスコ好きな奴がファンクを聞くようになったり、ファンク好きがロックに興味を持ったり、ロック好きがソウルを聞き始めたり、プリンスのおかげでそうなった。彼ははそうしたあらゆる音楽をひとりでやってきた。彼はそんなジャンルを超えたパイオニアなんだ」
「ホール&オーツ、ジョージ・マイケル、エミネムが黒人音楽をやってても、誰も文句は言わないだろう? ブラック・ミュージシャンがギターの音をひずませ、ワウワウの音を出して、長いトーンを出して、それを『おい、白人の音楽をやってるぞ』っておかしいだろ。本当はみんなブラック・ミュージックなんだよ。もし仮に音楽に色を付けるならね。僕は音楽に色付けはしないけど、どうしても色付けしなければならなければ、それはブラックだ。ルーツはブラックだ」

ケイリブが語っているとおり、プリンスは白人のものとされてきたロックに対して意識的にアプローチしてきた。
ブラックの文脈に引きこもうとするのでもなく、白人ロックをなぞろうとするのでもなく、
まさにケイリブが言うように、プリンスの音楽として唯一無比の独自のスタイルとして磨き上げてきた。
50年代のロックンロールがMTV時代のグルーヴとシンクロしたような、
あるいはジミヘンが00年代ショウビズ界に舞い戻ったような、
由緒正しいロックをド派手にモダンにショウアップするスタイルである。
最近ではウィリー・ムーンがやっているスタイルに近い。

ただ、今作はもう少しストレートでオールドスクールで肉体派のファンク・ロック・セッションである。
プリンスのギタープレイヤーとしてのテクとセンスがそのまま活かされたライブ演奏で、
バンドの演奏ががっちりとそれを受け止めて、録音も極めてハイファイで高品質。
ツェッペリン、ハンブル・パイなど70年代ハードロック、80年代レッチリ以降のファンクロックを総まとめにしたような大ぶりの豪快なアルバムだ。

この2枚でプリンスのミュージシャンとしてのいまだ衰えぬ力量は十分に感じられる。
単独ではもちろんだが、フジロックかサマーソニックでの来日とか、ないものかなあ。
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