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ノラ・ジョーンズ『ティル・ウィー・ミート・アゲイン ~ベスト・ライヴ・ヒット』
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ALBUM
ノラ・ジョーンズ ティル・ウィー・ミート・アゲイン ~ベスト・ライヴ・ヒット

2020〜21年はコロナ禍で全ツアーがキャンセルとなってしまったノラ・ジョーンズ。そんな状況下で世界中のファンへの贈り物として急遽企画された本作は、彼女の音楽キャリアの中でも(ちょっと意外だけど!)初となるライブ盤。2017〜19年の間に世界各地で行われた公演の中からベストな演奏を選りすぐった全14曲が収録されている(プラス、日本盤は17年の大阪公演の“サンライズ”をボーナス・トラックで収録!)。

もともとラウンジ・シンガー的な弾き語りを柱とするジョーンズのライブだけど、本盤の一番の聴きどころは、そんな彼女の「ジャズ・ピアニスト」としての瑞々しい感性だと思う。

息の合ったバンドのタイトな演奏(特にブライアン・ブレイドのドラム!)に助けられ、ここでのジョーンズは、ふだんのアルバムと比べ、より「オーガニック感」に重きを置いたインタープレイの一秒一秒を心の底から楽しんでいる。旬の採れたて野菜のパスタみたいに、シャッキシャキのオーガニックなんだ。

演奏曲目は、初期のおなじみのヒット曲と、音楽性がぐっと広がった最近の楽曲がバランスよく合わさり、いわば「裏ベスト盤」的な選曲。そんな中、やや異質ながら、本盤の最高のハイライトと言えるのは、サウンドガーデンの“ブラック・ホール・サン”のカバーだろう。

クリス・コーネルが2017年5月17日に自殺で亡くなった数日後、しかも、彼の人生で最後の演奏場所となったデトロイトの同会場での収録ということもあり、観衆の間にも明らかに特別な緊張感が漂う中、ジョーンズのソロ・ピアノは、あの稀代の名曲のサイケデリックなメロディを優しく解体し、やがて美しいエレジーへと変えていく。それは本当に、魔法のような時間である。(内瀬戸久司)



ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』6月号に掲載中です。
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ノラ・ジョーンズ ティル・ウィー・ミート・アゲイン ~ベスト・ライヴ・ヒット - 『rockin'on』2021年6月号『rockin'on』2021年6月号
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