【JAPAN最新号】SEKAI NO OWARI、深い海の底を照らした眩い光──祝祭と再生のアリーナツアー「深海」レポート!

【JAPAN最新号】SEKAI NO OWARI、深い海の底を照らした眩い光──祝祭と再生のアリーナツアー「深海」レポート!

アルバム『Nautilus』を携え、3月の宮城・セキスイハイムスーパーアリーナからスタートしたSEKAI NO OWARIのアリーナツアー「深海」。15会場33公演という、バンド史上最大規模のツアーがついに完結した。最終目的地であるKアリーナ横浜のステージでメンバーは口々に「やっとここまできた」と感慨を語り、そこにFukaseは「こんなに終わりを楽しみにしているバンドはいない」とすかさずつっこんでいたが、その朗らかな表情が物語るように、このツアーはきっと彼らにとって大きな一歩となったはずだ。その「一歩」というのは単に「最大規模のツアーを走り切った」というだけではなく、SEKAI NO OWARIというバンドがこれからも続いていくために、そしてインタビューなどでも語られている通りここ数年を長く暗いトンネルの中で過ごしてきたFukaseがもう一度前を向くために必要なステップだったということだ。「深海」というタイトルとは裏腹のアッパーなノリ。『Nautilus』の楽曲たちをこれまでセカオワが生み出してきた楽曲たちとそこで紡がれてきた物語が支え、補強するような美しいセットリスト。いつも以上に饒舌なメンバーの醸し出す空気も含めて、僕が観たKアリーナ初日、8月10日の会場には祝祭感が徹頭徹尾漂っていた。

この日のライブの途中で、実はちょっとしたアクシデントが起きた。ライブも終盤に差し掛かろうかという13曲目“Monsoon Night”を歌っている最中か歌い終えたあとに、Fukaseがステージセットで手を切ってしまったのだ。手のひらを客席に向けながら「血が……」と口にするFukase。当然会場内はざわついたし、処置のためにFukaseは一度舞台袖へと下がったのだが、当人はまるでなんてことはないというような感じで、残されたメンバーもごく自然にMCで場を繋ぎ、やがて戻ってきたFukaseも床に落ちた血を自分で拭いたりしながら何事もなかったかのようにライブを続けていった。プロとしてはそれが当たり前なのかもしれないが、その光景に僕は、切れば血の出る肉体をフルに使って、隅々まで作り込まれた極上のエンターテインメントを創り出す、まさにバンドとしてのSEKAI NO OWARIがより強くなって戻ってきた──そんな印象を強く感じたのだった。(以下、本誌記事に続く)

テキスト=小川智宏 撮影=太田好治、ヤオタケシ
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年10月号より抜粋)


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