【JAPAN最新号】「歌を歌うこと」はかくも気高く、難しい。そして、だからこそ歌い続ける。LiSAの歌、その到達点としての新曲“ブラックボックス”に込められた表現、そのすべて

【JAPAN最新号】「歌を歌うこと」はかくも気高く、難しい。そして、だからこそ歌い続ける。LiSAの歌、その到達点としての新曲“ブラックボックス”に込められた表現、そのすべて

その人の声でこの楽曲がどう表現されるのか聴いてみたい。
ソングライターが心揺さぶられる歌声を持っている人をシンガーと呼ぶんだと思う

新曲“ブラックボックス”はamazarashi、秋田ひろむの作詞作曲による楽曲で、つまりLiSAは歌詞を書いていないし、なんらかの思いと訴えを、本人が直接刻み込んでいるわけではない。だが、この楽曲は、とても濃厚に、極めて精度高く「LiSA」の表現になっている。LiSAがあの声を通して訴えかける性急な生き様、なぜこの世界はやるせないのか、無常な真実をめぐる喪失感。そういった、文学的で本質的な「メッセージ」が強烈な説得力をもって届いてくる。これは本当にすごいことだと思う。歌を歌い、形になる前の思いや疑問を、たった数分の楽曲を通して届け切ること。それを、確かな才能と感性を持った歌い手にだけ実現することができるある種の魔法なのだとするならば、この楽曲は、歌という魔法の習得を目指し、誠心誠意歌に向き合ってきたLiSAにとっての、ひとつの最高傑作であると言い切ることができる。繊細なファルセット、他の誰にも真似のできない、あの高音をピンポイントで刺し貫いていく正確無比なスキル、テクニック、そしてその跳躍の瞬間に押し寄せる圧倒的な興奮。LiSAは歌い手として、この楽曲で過去のいつよりも高く跳んでみせている。

軽やかに歌い、シンガー表現の粋を突き詰めていくLiSA。この孤高の挑戦を続けた果てに、アーティストとしての新たな世界が広がっていることを、LiSAはとてもよく知っているのだと思う。そんな確信を語ってもらった。

インタビュー=小栁大輔 撮影=山﨑泰治
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年10月号より抜粋)


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