エレファントカシマシ/日比谷野外大音楽堂

エレファントカシマシ/日比谷野外大音楽堂 - All photo by 岡田貴之All photo by 岡田貴之


●セットリスト
01.シグナル
02.愛の夢をくれ
03.孤独な旅人
04.明日に向かって走れ
05.面影
06.こうして部屋で寝転んでるとまるで死ぬのを待ってるみたい
07.翳りゆく部屋
08.リッスントゥザミュージック
09.彼女は買い物の帰り道
10.笑顔の未来へ
11.ハナウタ~遠い昔からの物語~
12.明日への記憶
13.旅立ちの朝
14.四月の風
15.悲しみの果て
16.今宵の月のように
17.RAINBOW
18.かけだす男
19.月の夜
20.武蔵野
21.俺たちの明日
22.友達がいるのさ
23.ズレてる方がいい
(アンコール)
EN01.so many people
EN02.ファイティングマン
EN03.星の降るような夜に


「今日は本当に、独特の、でもすごく思い出深い、30回目の野音になりました! ありがとうエブリバディ!」
容赦なく吹きつける梅雨寒の雨と風の中、宮本浩次(Vo・G)が突き上げる感謝の言葉が、そして何よりその渾身の歌と演奏越しに響き渡るエレファントカシマシのメロディと音像が、満場のオーディエンスの体と心を力強い祝祭感で満たしていく――。

エレファントカシマシ/日比谷野外大音楽堂

デビュー間もない1990年から、幾多の危機や困難に直面しながらも毎年ここ日比谷野音のステージに立ち続け、デビュー30周年の節目を後にしてなおもバンドの黄金期を刷新し続けているエレファントカシマシ。
毎年異なる表情を見せてきた「エレカシ野音」の中でも、宮本浩次のソロデビューという大きな転機も迎えた2019年のステージは、「30回目の野音」の感慨と、ロックアーティストの枠に収まりきらない「音楽家・宮本浩次」の可能性を剥き出しに躍進する「今」のモードがスリリングに渦巻く、珠玉のライブだった。

誰もがレインウェアをずぶ濡れにして開演を待ち侘びている中、宮本浩次・石森敏行(G)・高緑成治(B)・冨永義之(Dr)にサポートキーボード=細海魚を加えた5人編成での“シグナル”からライブはスタート。《どの道俺は道半ばに命燃やし尽くす》の一節を突き上げる宮本の激唱が、雨の野音をびりびりと震わせていく。

エレファントカシマシ/日比谷野外大音楽堂

さらに“愛の夢をくれ”、“孤独な旅人”へ、とエレカシヒストリーの中でも紅蓮のメロディが印象的な楽曲を次々に披露。“珍奇男”や“星の砂”といったルサンチマン逆噴射的なロック感ではなく、奮い立つ魂をそのまま渾身のメロディに結晶させたような、そしてそのメロディを全身振り絞って歌い上げることで宮本自身もこの上なく高揚するような――そんな宮本の表現の構図が、この日のアクトからはよりいっそうくっきりと浮かび上がって見えた。

“明日に向かって走れ”、“面影”まで演奏したところで、細海魚に代わってヒラマミキオ(G)と蔦谷好位置(Key)が登場して“こうして部屋で寝転んでるとまるで死ぬのを待ってるみたい”へ。分厚いギターサウンドとオルガンの響きの中、宮本は雨に濡れるのも構わずマイクを掴んで舞台前面に飛び出し、気迫の歌声とシャウトで会場一面の観客のさらなる熱気と歓喜を呼び起こしてみせる。そこから“翳りゆく部屋”のカバーをひときわ美しく繰り広げ、ひとつのステージの中に明快なコントラストを生み出していく。

「今日はあいにくの雨なんですけど、みんな本当に集まってくれてありがとう! 野音エブリバディ!」と野音一丸の拍手喝采を巻き起こしたところで、今度は金原千恵子(Violin)&笠原あやの(Cello)も加わった8人編成に。
「野音の館長さんとも顔見知りになっちゃいましたけども。毎年来るもんですから」と「30回目」ならではのMCを挟んで、“リッスントゥザミュージック”でのバンドサウンド×美麗ストリングスの共鳴が雨空を貫いて広がっていった。

エレファントカシマシ/日比谷野外大音楽堂

“彼女は買い物の帰り道”のメランコリックなBメロから一気にサビで凛とした絶景へと観る者すべてを誘う至上の展開。高揚も憂いも逐一メロディの激しいアップダウンに託したような独自のソングライティングと、それを完全に体現し尽くしてみせる圧巻のボーカリゼーション。そんな宮本の独創性が、格段にタフさを増したバンドアンサンブルとせめぎ合いながら、今この時代を鼓舞するかの如く響いてくる。“明日への記憶”のシンフォニックバラードとでも呼ぶべき音像は、名場面満載のこの日のアクトでも特筆すべき瞬間だった。

“旅立ちの朝”を4人+ヒラマ&細海編成で奏でた後、ヒラマに代わって新たに舞台に姿を見せたのは、90年代再デビュー期を支えたギタリストであり、宮本も「我々エレファントカシマシの、私はもうほんと『先生』と思ってます。大先輩」と語る名匠・土方隆行だった。
「“四月の風”を土方さんのギターで――今日は30回目の野音なんで、絶対一緒に歌いたいと思って」と土方のアコギとともに歌い上げた“四月の風”、さらに土方がストラトに持ち替えての“悲しみの果て”、とアルバム『ココロに花を』(1996年発売)の名曲を立て続けに響かせてみせる。
そして、「今は亡き『もうひとりの先生』と一緒に作った歌」(宮本)と故・佐久間正英に触れつつ披露した“今宵の月のように”が、雨雲の立ち込める都心の空ごと抱き締めるように広がっていった。「雨の中ありがとう、盛り上がってくれて! エブリバディ、カッコいいぜ!」のコールとともに「一部」を締め括る宮本とメンバーの姿に、惜しみない拍手が降り注いだ。

エレファントカシマシ/日比谷野外大音楽堂

「二部」は再び4人+細海編成で、一転して“RAINBOW”の赤黒く噴き上がるロックの極致からスタート。“かけだす男”のあたりで雨脚がさらに強まるものの、ストラトを抱えた宮本は《ずぶぬれのままで》という歌詞そのままに全身びしょ濡れになりながらも不屈の歌を轟かせていく。
そのまま“月の夜”の静寂と戦慄、“武蔵野”の雄大な音風景……と1曲ごとに鮮烈なイマジネーションを描き上げていく。

「雨にも負けず……なんて奴らだ!」と観客への最大限のエールをこめて“俺たちの明日”をありったけのバイタリティとともに熱唱し、「こんな雨の中でコンサートやっていいもんかな? 大丈夫?」と呼びかけながら、「エレカシ野音」には欠かせない“友達がいるのさ”をあふれんばかりの情感とともに歌い上げる宮本。「いい曲作るんで、また会おうぜ!」と再び蔦谷・金原・笠原・ヒラマ・土方を舞台に呼び込み、10人編成で繰り出す“ズレてる方がいい”の強靭なリフとメロディが、そして《移ろうこの世間にゃあ/ズレてる方がいい》の灼熱の歌が、ロックの福音そのもののように鳴り響いていた。

エレファントカシマシ/日比谷野外大音楽堂

アンコールではもう一度10人ラインナップの熱演で客席一面に拳を突き上がらせた“so many people”で大団円――と思いきや、さらに4人+細海で舞台に戻って“ファイティングマン”を轟かせ、最後はメンバー4人だけでの“星の降るような夜に”で「30回目の野音」のフィナーレを飾ってみせた。
バンドの長い道程をファンとともに祝福すると同時に、エレファントカシマシが/宮本が信じてきた音楽の正しさと揺るぎなさを、そのキャリアを支えたキーパーソンとともに真っ向から証明しつつ「その先」をこじ開けるような、眩しさと凄味に満ちた一夜だった。(高橋智樹)

【速報】30回目の「エレカシ野音」2日目。雨空を震わせた「魂の旋律」の凄味
ふと頭の中でメロディを追っただけで、感情が揺さぶられ魂が沸き立つような根源的な訴求力。 観る者聴く者すべての心を震わせる宮本浩次の旋律は同時に、宮本自身を鼓舞し突き動かし、凄絶な絶唱を呼び起こす巨大な原動力でもある。 「ロックアーティスト」という、ひと言では収まりようのない宮本の「音楽家」…
【速報】30回目の「エレカシ野音」2日目。雨空を震わせた「魂の旋律」の凄味
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