「僕がここ(東京)でどれほどライブをやりたいと思い続けてきたか、みんなわかってないでしょ!」とトロイは冗談めかして言っていたけれど、トロイ・シヴァンにとっても彼の日本のファンにとっても、本当に悲願・待望の初単独公演だった。
ちなみにトロイ・シヴァンの初来日は2016年のフジロックだった。彼はこの時の日本での思い出をベースに、「東京から絵葉書を送ったんだけど、君は受け取ってくれなかったみたいだね。日本語で書いてみたんだけどな」と歌う“Postcard”を書いている。このエピソードひとつとってもトロイの日本、東京への強い思い入れが感じられるが、この日、“Postcard”の冒頭を一語一句噛みしめるように合唱した日本のファンはそんな彼の想いをもちろん知っていたし、トロイとファンがようやく実現したこの機会を祝福し合い、互いに愛を交換し合うような幸せすぎる空間だったのだ。
一夜限りのプレミア公演となった豊洲PITはもちろんソールドアウト。整理入場に手間取り開演が1時間近く押すというハプニングもありつつも、トロイがステージではなくバルコニーに登場するというオープナーの“Seventeen”のドラマティックな演出を受けて凄まじい悲鳴と歓声が轟く。「君のためだけに僕は花開くんだ」と歌う“Bloom”では、トロイとファンが互いに「Just for you!」と指差し合う相思相愛のコール&レスポンスに!
トロイの2度の衣装替えを挟み、『ブルーム』と『ブルー・ネイバーフッド』のナンバーをバランスよく組み込んでいく3部構成のステージだった。トロイの曲は基本的に淡い色彩のセンシャルなエレクトロ・ポップが主体だが、それがブリーピーなシンセが効いたハードなベース・ミュージックに転じたり、トロイの光り輝くカリスマを存分に生かしたゴージャスなアンセムになったり、ステージにソファーが運び込まれ、そのインティメットなムードの中でトロイがまるで友達に打ち明けるように失恋を歌ったりと、パフォーマンスの多彩によって新たに濃淡とメリハリを増していくのが彼のライブの醍醐味だ。
“Dance To This”ではアリアナ・グランデのパートを熱唱するファンが続出、まるでトロイとファンのデュエット・ナンバーと化していたのが素晴らしかったし、とにかくこの日のオーディエンスは本当に熱狂的でロイヤルだった。そして、アンコールの“Youth”と“My My My!”で思いっきり叫び、思いっきり飛び跳ね、声も枯れんばかりの大声で歌う、あの心の箍が外れたかのように爆発的にエモーショナルだった彼女&彼らの姿は、トロイが『ブルーム』で示した「自分らしく輝く」というメッセージを体現しているようにも見えた。(粉川しの)
<SETLIST>
Seventeen
Bloom
Plum
Heaven
Fools
Lucky Strike
Wild
i'm so tired...
Postcard
The Good Side
What A Heavenly Way To Die
Bite
1999
Dance To This
Animal
(Encore)
Youth
My My My!