ディセンデンツの現役バリバリのパンク・ショウに感服! ポップ・パンクの元祖がノンストップで駆け抜けた東京公演を観た
2019.04.26 13:40
グリーン・デイやブリンク182も影響を受けたと公言して憚らず、日本のパンク系バンドからも熱烈な支持を得ているポップ・パンクの元祖的存在、ディセンデンツが7年ぶりに来日! 今回は東名阪の3カ所で開催され、見事に全公演ソールド・アウト。
ツアー2日目にあたる東京・TSUTAYA O-EAST公演はNAMBA69がサポート・アクトに付き、楽屋において「ビル(・スティーヴンソン/Dr)さんがあまり話してくれない(笑)」と嘆きつつ、「オール(※ボーカル違いの別名バンド)の時に出会って、(Hi-STANDARDの時に)一緒にワープド・ツアー(98年)を回った」と難波章浩(Vo/B)は思い出話を挟み、ハードコア色を強めたラウドな新曲“MANIAC Ⅲ”を放つなど、フロアを十二分に温めてくれた。
そして19時54分、遂にディセンデンツの登場だ。マイロ・オーカーマン(Vo)、カール・アルヴァレズ(B)、スティーヴン・エガートン(G)、そしてビルのメンバー4人が揃うと、演奏前からギュウギュウ状態のフロアは大波のごとく揺れ動き、殺気立つムードが漂う。それから“Suburban Home”、“Everything Sucks”と畳み掛けると、初っ端から観客は大声で歌い上げ、ディセンデンツのことが好きで好きでたまらない!という空気一色に染められていく。間髪入れずに“Hope”に入ると、マイロは小学生の遠足みたいに首にブラ下げた水筒(!)を飲み出した。こういうシーンからも、飾らず、背伸びせず、常に等身大で勝負する普段着パンクの魅力の一端を垣間見た気がした。つくづく、愛すべきバンドである。
そして、12年ぶりに出たニュー・アルバム『Hypercaffium Spazzinate』(16年発表)から“On Paper”、“Shameless Halo"、“No Fat Burger”、“Feel This”、“Without Love”など多くの楽曲をセットリストに取り込み、過去曲との馴染み具合も抜群。特にバラード調の“Without Love”においてもモッシュに興じるライブ猛者もいて驚いた。しかも音源よりスローテンポで聴かせていたのに!
だが、そんな光景を観て、ふと気づいた。ディセンデンツはどの曲にも一聴で心を捉える親密なメロディが宿っている。もっと言えば、「歌ものパンク」の最高峰と言いたくなる説得力さえ感じる。曲のテンポが速いとか、演奏が激しいとか、そんな技術うんぬんを飛び越え、聴き手の懐にダイレクトに飛んでくるメロディの高揚感がたまらなく素晴らしい。もはや職人芸の域に達したシンプルなメロディと演奏の良さに、フロアが静まり返る瞬間は皆無だった。
ライブ自体はMCらしいMCもなく、ほぼノンストップで突っ走り続ける。白髪混じりの円熟し切ったメンバーの容貌とは反比例し、現役中の現役としてバリバリのパンク・ショウを叩き付けてくれた。終わってみると、Wアンコールを含めて、全38曲をやり切るタフなアスリートっぷりを披露。若いバンドにはまだまだ道を譲らんぞ、と言わんばかりの大人げない貫禄をまざまざと見せつけたステージングに心底感動した。マイロが水筒をブラ下げている理由も至極納得。(荒金良介)